1ページ目 【ヤシン師殺害で揺れる「ハマス」とは何か】
2ページ目 【ヤシン師殺害でハマスは弱体化するか】
3ページ目 【中東和平めざすアメリカはどうすべきか】

【中東和平めざすアメリカはどうすべきか】
北朝鮮問題もあって中台関係をこじらせたくないアメリカ


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ここで、アメリカのブッシュ政権が示していた「中東和平ロードマップ」をおさらいしてみましょう。

まず第一段階として、パレスチナ側はテロなどの攻撃を一切やめる。一方イスラエル側は、パレスチナ人の地への入植活動をやめる。こうして第2段階、パレスチナとイスラエルの国境を暫定的に作り、パレスチナ自治政府が憲法を作る。

そして第3段階、国際会議で国境線や難民問題、入植問題などを協議し、おそくとも2005年までにはパレスチナ国家を建設する、というものでした。はっきりいってアメリカは、このためにイラクに攻め込んだようなものです。イラクを「民主化」し、中東で「民主化のドミノ」をおこし、パレスチナもアラファト議長の専横から民主化して、イスラエルとの関係を良化させる。

まあここまではおおげさな観測かもしれませんが、アメリカがパレスチナ問題にわりと真剣に取り組んでいたのは事実です。そのため、イスラエルとパレスチナに、それぞれ自制をうながしてきました。しかし、ヤシン師殺害で、この努力もふいになりそうな気配です。

ハマスはイスラエル国家の存在すら否定している。そんなハマスが、ガザで根をおろして、民衆の支持を得ている。このままでは、PLOが主体となっているパレスチナ自治政府だけでのパレスチナ国家建設は困難です。ハマスにテロをやめさせ、和平のプロセスに入ってもらわなければならない。

しかしイスラエルは、ハマスがわれわれを認めないんなら、われわれもハマスをぶっ潰しちゃうよ、という強硬手段に出たわけですね。これではハマスを和平プロセスにうんぬんいってる場合じゃなくなってくる。

しかも、パレスチナ人の多くは、イスラエルの背後にはアメリカがついていると確信していますから、ヤシン師殺害で、反アメリカ感情が高まることも予想される。そうなると、アメリカ主導の中東和平が、まったくうまくいかなくなってしまうわけですね。

アメリカは、1991年の湾岸戦争以降、イスラエルをおびやかしてきたイラクのフセイン政権というイスラエルへの脅威がなくなった以上、過度なイスラエル支援は、そろそろ慎む時期がきたのかもしれません。アメリカがイスラエルを援助する名目だった冷戦もとっくの昔に終わり(アラブ民族主義と社会主義の結びつきから原油地帯中東を守るため)、イスラエルと本気で戦おうという国はなくなりました。

過去50年あまりにわたって、アメリカは軍事的に強力にイスラエルの援助をしてきました。はっきりいってイスラエルに核兵器があることはわかっているのに、アメリカはなにもいいません。イラクは核兵器を開発しているという疑いだけで攻め込まれ、北朝鮮には核兵器開発をやめるよう強硬に要求しているというのに。

アメリカがイスラエルに対し、より中立的な立場になれば、アメリカも和平の仲介者としてうまく立ち回れるはずです。それが、イスラエルとパレスチナの共存につながり、両者ともにメリットを享受できる。アメリカの中東政策を支配しているといわれる「ユダヤ・ロビー(ユダヤ人の圧力団体)」もそれで満足すべきです。

しかし、アメリカはいまだに親イスラエルの立場のまま、中東和平を行おうとしています。これがどれほど難しいか、そろそろわからなければならない時期にきているのではないでしょうか。

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