量的緩和、いま、なぜ注目?
最近の日本経済は金融システム不安が遠のいたということで、金融機関が手元にいざというときのお金をたくさん置いておかなくても良くなってきた状況です。そのため、政策で決められた、日銀当座預金残高の下限30兆円を引き下げても、それほど問題ではないのではないか、という意見も出始めてきました。
ところが、現在30兆円という下限を下げると「金融引き締め」とも受け取られてしまいます。本格的に景気がしっかりしていないうちに政策の転換ととられる動きをすると、回復しかけていた景気が、腰折れになってしまうのではないかという心配をしているのです。
景気の舵取りはそう簡単ではない!さあ、どうする日銀!? |
これだけ慎重になっているのは、過去の失敗があるからです。1999年2月からゼロ金利政策を取っていた政府は、IT産業が景気を引っ張る形で日本経済が復活したと判断し、2000年8月に解除しました。その時には、まだ日本経済は全般的には回復していなかったので、その直後に経営破たんした企業が続々現れました。スーパーのマイカルやゼネコンの青木建設など、IT産業以外はまだ体力が回復していなかったのです。
そのため今の日銀は、日本経済の回復ぶりをかなり慎重に見つめています。現在の量的緩和の水準(30兆~35兆円)を続けるのは、消費者物価指数(CPI)が安定的に前年比ゼロ%以上になるまで、という姿勢をアピールしています。
2005年5月20日に行われた日銀の金融政策決定会合でも、基本はあくまで30兆~35兆円という目標をそのままに、一時的にそれを下回ることがあれば容認する、という決定となりました。この表現は、20日の金融政策決定会合直後の市場の混乱を避けることができたものの、目標を弾力化するという分かりにくさを残してしまいました。
今後は、量的緩和の下限目標額をいつ、どの位減らすのか、また目標の解除はいつなのか、という点が議論の焦点になります。日銀が金融政策の舵取りをちょっとでも誤ると、日本経済の回復に悪影響を及ぼします。今後の日銀の金融政策には注目が集まることでしょう。
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