カネボウがきっかけで上場廃止基準の見直し
今回のカネボウの上場廃止に関しての東証の決断は、さまざまな意見があります。特に、今回カネボウは自発的に粉飾決算を公表したため、正直者が上場廃止というペナルティーを受けるのなら隠し通した方が利口じゃないか、と思われてしまう点が問題とされています。何しろ、鶴島琢夫東証社長が「虚偽報告を見抜くのは能力的にも不可能」と言っているほどです。ばれない可能性が高い、と思って隠し通したくもなるでしょう。
東証のプライドはどこまで保てるか? |
ここで金融庁は、1970年に制定した上場廃止基準に対し、「企業再生の手法などが多様化しており、ルールが現実から遅れていないかどうかを検討し、不適切な点があれば見直すのは当然だ」と指摘しています。企業再生などが急増している現状を反映させたルール整備が必要だとして、個別の事情に応じた運用や基準の弾力化なども考慮して、東証から金融庁に6月13日までに見直し案を報告するように求めました。
東証自体の上場が背景に
実は、単に既存の上場廃止基準が時代遅れだとか判断があいまいだとかということ以外に、もうひとつ問題になっていることがあります。それは、東証が年内にも自らの上場を予定していることです。取引所の公正さを保つため、企業の上場や売買を審査する自主規制部門を分社化するように金融庁は東証に促す方針です。
上場企業の株取引を監視する役目でありながら、自らが上場するため、「(東証自らの)利益追求のために企業の監視が甘くなり、上場基準も緩くなるのではないか」と危ぶむ声も出ています。金融庁は東証の上場を機会にこの監視機能を東証から分離して、監督官庁に移すというシナリオを組んでいるとも見られています。
金融庁にとって、東証から分離した自主規制機能を金融庁配下の証券取引等監視委員会に取り込んで米国のSEC(証券取引委員会)並みに強化したいという腹づもりがあるようです。
一方、東証には、昨年から自主規制機能を強化してきたプライドもあり、金融庁と東証が対立を続けているというわけです。
もちろん、チェック機能は証券取引所だけの役割ではありません。金融庁や取引所、監査法人、取引銀行などにも、カネボウの粉飾決算を発見できずにいた責任の一端があるとも言えます。今回の事件は、単に上場廃止の際の基準の見直しだけではなく、継続的なチェック体制の強化が求められるのではないでしょうか。
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