文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
2005年5月12日、東京証券取引所はカネボウ株の上場廃止を決定しました。それについては、前回記事 「再生カネボウ エッ?上場廃止?」でお伝えしたとおりです。ここでは、上場廃止とはどういうことなのか、また上場廃止基準についての最近の論議を見て行きましょう。上場会社って何か特別?上場廃止になると、どうなるの? |
<INDEX>
そもそも、上場って何なの?(1P目)
上場廃止とはどういうこと?(1P目)
カネボウがきっかけで上場廃止基準の見直し(2P目)
東証自体の上場が背景に(2P目)
そもそも、上場って何なの?
株式は、株式会社が事業資金を集める時に発行して投資家に渡す証券のひとつです。出資をして株式を持っている投資家が、買いたい人を見つける場所として、東証など5つの証券取引所とジャスダック取引所があります。同時に、株式を買いたい人が、売りたい人を見つける場所でもあります。証券取引所が売買を認めて売買取引が行われることを上場といい、その会社を上場会社といいます。上場するには、証券取引所が決めた基準を満たし、取引所に上場を認められる必要があります。
例えば、東京証券取引所第1部の上場基準は、公開株式単位数が10万株以上、株主資本10億円、時価総額500億円以上のほか、利益水準、株主数、少数特定者持株数比率の基準があります。
上場することで以下のようなメリットが生まれます。
・資金を調達しやすくなり、体質の改善・充実を図ることができる
・社会的に認知され、会社の知名度が向上する
・取引先・金融機関等に対しても信用が高まる
・役員・従業員の自覚が高まり、業績に反映され、優秀な人材も確保できる
・個人経営から組織運営になることで、内部管理体制の充実が図られる
一方で上場会社には、決算発表、企業内容の適時・適切な開示(投資者保護等)など新たな社会的責任や義務が生じます。
上場廃止とはどういうこと?
証券市場から退場を命じられるのが、上場廃止 |
上場会社が倒産した場合上場廃止になりますが、その他にも時価総額や取引量など取引所ごとにいくつかの基準が設けられています。
上場廃止は、大きく以下のようなケースに分けられます。
・発行会社が会社更生法適用を申請、または一定期間債務超過に陥った場合
・上場株券の絶対流通量が不足し公正な価格形成が困難になったとき
・発行会社が合併などのために株式交換を行う場合
債務超過は、例外による猶予期間もありますがほとんどのケースでは直近2年間、上場株券の流通量不足については、市場ごとに上場株式単位数、少数特定者持株比率、株主数、売買高などの基準が設けられています。
上場廃止が決定すると、JASDAQ上場銘柄の場合はJASDAQ管理銘柄、それ以外では整理ポストへ移されて、廃止までの間周知期間としての取引が行われます。上場廃止決定により株価が急落することが多いため、上場廃止の発表後から最初の値段がつくまで値幅制限が撤廃されることも多くあります。
合併を理由とした場合は、株式交換実施日に以前の銘柄の上場が廃止されますが、一般に、交換後の新しい株式が交換実施日に新規上場されるため、取引は引き続き行うことができます。
次のページでは、カネボウ問題が引き金になって、今、何が起こっているのかをお伝えします。