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【時代ともに変わっていくのか「永世中立」】
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そんなスイスのもう一つの顔、それが「永世中立国」としてのスイスです。
永世中立はどの同盟にも属さないという政策を徹底するもので、これによって平和や自由を守ろうというものです。19世紀初頭のウィーン条約で、国際的に承認され、第1次・第2次世界大戦でも中立を堅持してきました。
そのため、市場統合をめざすEU(ヨーロッパ連合)はおろか、ついこの間まで国連にも加盟してきませんでした。
しかし、1990年代末に、永世中立の「影」の部分が表面化し、国際的な問題となります。スイスの銀行に、ナチスが第2次世界大戦中、ユダヤ人から略奪した財産を、スイスが隠しておいた、ということが発覚するのです。
さらに、ナチスによって犠牲となったユダヤ人の口座が眠っていることも隠し続け、犠牲者の遺族などに返そうともせず、50年あまり隠してきた、ということもわかります。
永世中立といっても、あのナチズムに対しても中立なのか。中立ということをたてにして、国際社会で果たすべき役割を果たさないできたのではないか。そんなことが突き付けられたわけですね。
(その後、ユダヤ人遺族などへの返還が進んでいます。)
さらに国際経済のグローバリゼーションの波、周りのヨーロッパ諸国の市場統合、そんななか、このままではスイスが孤立してしまうという危機感が、じょじょに生まれてきているようです。
それを反映していたのが、2002年の国連加盟だったのでしょう。
今年5月の国民投票で、軍隊を大幅に削減し、徴兵期間を短縮することが決定しました。それまでスイスは中立を守るために「ハリネズミ」といわれるような武装を国民レベルで行ってきたのですが(各家庭に武器があったり)、そういう時代ではないということなのでしょうか。