社会ニュース/よくわかる経済

円高?円安?誰が決めるの?(2ページ目)

日本の超低金利の影響で、外貨金融商品への投資を検討する人が増えています。自己責任といわれますが、変動する相場をどのように見たらよいのか?為替市場のニュースでよく聞く「円売り介入」について解説します。

執筆者:石原 敬子

為替介入をしないでいるとどうなるのか?

本来のマーケットの機能である、ニーズで為替相場が決定されることになります。投資家にとってニーズとは?

■日本を評価し、円を欲しいと思うか。■日本に対し低い評価を下し、円をいらないと思うか。

このニーズで決まります。評価とは、経済が強いとか、政治が安定しているとか、金利が高く投資に値するなど、多方面での評価があります。現状では、日本と米国を比較した場合、最悪と思っていた日本が、多少なりとも上向きになってきている、その期待感から、円を欲しいと思う投資家が以前に比べると増えてきたのではないかと思います。つまり、「介入」をせずに、マーケットを自然の流れに任せていれば、円高・ドル安の流れになるのではないかと感じます。

為替介入の弊害はないのか?

お札
為替介入は円高不況の治療法の一つ。だが…
ここまで読んで頂いた方は、それなら介入の結果、円安・ドル高であれば、日本の景気回復に拍車をかけて良い方向に進むのではないか、と感じていることでしょう。ところが、そううまく行くものではないのです。円売り・ドル買いの為替介入はセーフティネットのように感じるかもしれませんが、いくつかの問題点もはらんでいます。円を売って、ドルを買ったその資金の大半は、日本政府が米国の財務省証券として保有しています。つまり、財政赤字の米国の資金調達を支援していることになります。
問題1
米国債を買いつづけ、米国債の価格下落に歯止めを掛けている結果になっている。結果、米国債相場の金利は安定しており、大統領選挙前の政治的に神経質な米国金利の安定に協力している。潜在する米国景気の陰りが顕在化しない。さらに売る時に大量に売るとなると、米国債相場の暴落を招くおそれがある。
問題2
円高・ドル安による為替差損を被ることになる。ドル建て資産を持っていることになりますから、ドル安になったら、ドル建て資産の評価は下がりますよね。
公共投資
国の外貨建資産による含み損は、年間の公共投資額に匹敵するほど
2004年1月19日には財務省によって、円売り・ドル買い介入で得た外貨資産(外国為替資金特別会計)の為替評価損は、今年度中に約2兆1200億円拡大し、累計約7兆8000億円弱に達する見通しと発表されました。約7兆8000億円弱といえば、2004年度予算(財務省原案)の公共事業関係費に匹敵します。公共事業関係費(道路整備、住宅都市環境整備、下水道処理施設整備の費用など)構造改革の目玉として、公共事業重点配分といって神経を使っている分野の予算に相当するくらいの評価損を抱えることになるとは、皮肉なものですね。
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