「元左翼」も支持してしまう現状、既成政党は対応できるか?
フランスにとどまらず、西ヨーロッパは今、右翼政党の進出があいつぎ大きな問題となっています。
「ヨーロッパ右翼」の主張、各国によってばらつきはありますが、共通点は「移民排斥・制限」。イスラム諸国などからの移民を制限(ときには「追い出し」)することで、自国の雇用の確保や、治安の向上を実現しようというものです。
はっきりいって乱暴な主張ですが、一見わかりやすいロジックであるうえ、長いあいだにわたって高失業率になやんできた西ヨーロッパの人々にはかなり魅力的に映るのかもしれません。
しかしノルウェーのようにそれほど失業率が高くないところでも右翼政党が台頭しています。高失業率だけが右翼政党台頭の理由、というわけではなさそうです。
第2の背景として考えられるのが「ヨーロッパ統合」への反対、批判を右翼政党が取り込んでいる、というものです。
通貨統合をはじめとしてさまざまな面で統合をすすめる西ヨーロッパ。これにたいして「自国/自国民のアイデンティティー」がなくなってしまうのではないかという危機感を持った人々も少なくありません。
しかし既成政党の多くは統合支持ですから、こうした人々の不満、危機感を受け入れることはできません。結果、「自国民優先主義」をかかげる右翼政党が彼らの支持を集めている、というわけです。
そして、「既成政党への不信・不満」が右翼への支持をさらに広げているという面もあると思われます。
革新政党の政権樹立ももはや日常ごとになった西ヨーロッパ。ほとんどの主要政党が政権を経験したことで、革新政党も非常に現実的な主張をするようになりました。保守政党も革新政党の主張を取り入れるようになり、革新政党と保守政党の主張に大きな差がなくなってきている、といわれます。
こうして既成政党がことごとく現実主義化し、体制を守る側になってしまったわけです。こんななかで、体制への不満・批判はどこが請け負ってくれるのでしょう。
その不満の請負先になったのがまさに右翼/極右政党であったわけです。
たとえばフランス・FN(国民戦線)の支持層にはほんらい革新政党を支持してきたはずの労働者階級が多くいるといわれます。体制化した社会党に不満を持つ彼らに「雇用は移民をなくせば増える」と主張することで、FNは彼らをたくみにとりこんできたわけです。
ヨーロッパの右翼台頭の流れは本格化してきました。既成政党がそれぞれの魅力を取り戻し、国民の支持を取り戻すことができなければ、この流れは思った以上に加速してしまうかもしれません。