日本のODAはよく「バラまくだけで質が悪い」と批判されがちです。たしかに日本はODAに関しては「質より量」を追求してきた傾向にあります。それは、前ページで説明したような背景があるからなのでしょう。
じっさい、外務省が昨年、1998年実施のODA事業について調査したところ、40%の事業が「改善必要」とされているくらいです。また、日本のODA事業によって現地の環境が破壊された、住民の生活権が侵された・・などというようなこともしばしば指摘されています。
日本のODAが「ひもつき」であるということも批判の的です。ひもつき(タイド)とは、援助国がODA事業に必要な材料の発注先や工事をする企業を指定する(ということは自分の国の材料や企業などに指定する)というタイプの援助のことをいいます。
日本の場合、じつはこの「ひもつき率(タイド率)」は高くありません。むしろ低いくらい。しかしながら、それでも最近になってとくに政治家とODA事業を請け負う企業との癒着をしめすような事例がたくさん報道されているところを見ると、そのあたりがほんとうにちゃんとアンタイドになっているのか、大いに疑問が残るところです。
さて、こんなODAですが、小泉内閣は発足当初からODA予算の10%削減方針をかかげ、じっさい今年度の予算案ではODA予算が大幅にカットされています。
たしかに「質が悪い」「ばらまき型」と批判の多いODAですが、一律10%カットということで「量より質」へと切り替えることができるでしょうか。
不況なのでODAは大幅カット、かつ質が悪いのはそのまま、というのでは不況も好況もなく貧困にあえぐ発展途上国はたまらないでしょう。
ODAの質をいかに向上させていくか。川口外相はさっそく「第3者機関によるODA事業の優先順位づけ」という改革案を打ち出しました。しかし「ODAは戦略的な政策であり、民間にどうこういわれては困る」と公言する政治家もいるようです。
ともあれわれわれの税金によってODA事業は行われるわけです。それにしては「ODAはこうあるべきだ」という議論はあまり活発ではありません。そろそろ国民的な議論を展開する時期に来ているように思うのですが・・・。