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クレヨンしんちゃん、危うし?!(3ページ目)

日本の人気漫画『クレヨンしんちゃん』のキャラクターグッズを、本来の商標権保持者である双葉社が中国で販売できない事態が起こっています。なぜこうなってしまうのでしょうか?

執筆者:鳥羽 賢

商標を国際的に保護するマドリッドプロトコル

イベリア半島地図
マドリッドプロトコルは、1989年にマドリッドで採択された。
もう1つ双葉社が考慮しておくべきだったのは、現在ではマドリッドプロトコルに基づいた国際的な商標保護制度がきちんと存在しているという点でしょう。

マドリッドプロトコルは国境を越えて商標権を保護するためにできた制度です。この制度に基づいてWIPO(世界知的所有権機関)国際事務局に商標登録を申請すれば、現在加盟している約40ヶ国の全てで、商標権が保護されることになるのです。そして中国も加盟国に入っています。

これまで多数の国で商標登録をしたい場合には、それぞれの国で別々に手続きをしなくてはなりませんでした。そのために膨大な手間がかかり、国境を越えた商標登録手続きが非常に大変だったのです。マドリッドプロトコルのメリットは、それをたった1度の手続きで済ませられることにあります。

日本では2000年に正式に発効したので、すでに6年も経過しています。マドリッドプロトコルの国際商標登録を『クレヨンしんちゃん』について手続きしていれば、今回も話がかなり変わっていたのではないでしょうか?

海外ビジネスの厳しい現実が見える

商標権は商品名などについて与えられるもので、著作権とは別物です。今回、たとえ中国で先に商標登録がされていたとしても、著作権まで侵害されるものではありません。しかし現実には、中国企業は『蝋筆小新』という名前だけではなく、『クレヨンしんちゃん』そっくりの絵も使って商品を販売しています。

商標権については「早い者勝ちの原則」があるにしても、著作権にはそれはありません。なので、勝手に『クレヨンしんちゃん』そっくりの絵を使っている中国企業に対して法的措置を取るのも、ごく当然の行動でしょう。

しかし「商標登録は他企業に横取りされる可能性がある」という事実が今回の件ではっきりした以上、キレイごとばかりは言っていられません。今後同様のビジネスを行う企業は、商標権の確保についてもっと厳しく考えていった方がいいでしょう。


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