今回は、日銀の株式買い上げにについて、反対の立場の田村さんの意見と賛成の立場の私の意見を比較し、その違いはどこから生じたかという点について考えてみたいと思います。


前回の田村さんの意見と私の意見の違いは、次の3点に整理できます。

1. 実体経済がよくないのに株価を上げることに意味があるか
(田村さんの意見)
株価操作は、成績がよくならないのに通信簿を改ざんすることと同じ。
(私の意見)
田村さんの意見は正しく、私も賛成です。ただ、円高不況の際の金融緩和によるマネーが株式市場に流れ株価が上昇し、それがきっかけで景気がよくなったバブル景気のような例もあります。つまり、経済は合理的な正論だけで動いているのではなくて、「どんな手段でも、やっぱり、株価が上昇すれば嬉しい」という部分がかなりあるのではないかと思うのです。

2.通貨の信用力低下
(田村さんの意見)
株買い上げで通貨をどんどん発行したら通貨の信用力が低下してしまう。
(私の意見)
株買い上げて通貨が増えた分は、他の部分で通貨を減らせば問題は生じません。

3.国民へのツケ
(田村さんの意見)
また、株価が下がったときの日銀の損失を税金で穴埋めするのは問題。私としては結局はバブルのつけを当事者が払わず、国民全体に負わせ続けていることが問題だと思うのです。
(私の意見)
同感です。正論です。しかし、正論を貫くことによって、日本経済が破綻してしまっては困ってしまいます。なお、株価下落時の損は国民負担となりますが、成功すれば利益が出て、その利益は国庫に納入され、その分税金は減ることも指摘しておきます。

以上、田村さんの意見は筋がとおっており、もっともだと思います。実は、私も、かつては同じ意見を持っていました。今でも、日銀の株式買い上げ政策には、一抹の「うさん臭さ」を感じています。しかし、最近になって、複数の経済の専門家が日銀の株式買い上げを提案している背景には、財政の危機的状況と不良債権問題の泥沼化を原因とした日本経済の危機的状況があります。

まず、このような状態が数年続けば国家財政が破綻するのではないかという懸念です。デフレは借金の負担を重くします。(この点はデットデフレーションをご覧下さい。)日本の借金王は政府ですから、デフレにより財政危機はどんどん深刻化します。しかも、2年前の内閣府の推計によると、日本は好景気になっても財政赤字はなくならない状況になっています。赤字がなくならないということは、このままでは、借入残高は雪だるま式に増えつづけ、やがて破綻するということです。

なお、財政危機の考え方は不良債権問題についてもあてはまります。借入の多い企業の借金の負担もデフレでどんどん大きくなり、問題解決はどんどん困難になっていくということです。借金を返せない企業は救済せずに倒産させればよいという正論もありますが、それをやってしまうとかなりの企業が倒産し日本経済は壊滅的状況になる恐れがあります。

つまり、「日本経済は手術を行うには体力が弱くなりすぎた」という認識です。だから、通常では考えられない「日銀の株価買い上げなどという姑息でリスクのある政策」でもやるべきだと考えるのです。

要するに、私が田村さんの意見の各論点に全て賛成なのに、結論が違ってくる最大のポイントは、「日本経済には体力がなく、正攻法を行う時間がないのではないか」という点に尽きるのです。もちろん、私としても、田村さんの意見のように正攻法で日本経済の再建ができるのであれば、そちらの方が望ましいと思います。

どちらの意見も専門家も主張しているくらいですから、それなりの理屈は通っているのですが、皆さんは、どうお考えになりますか?あなたの一票で是非ご意見を。


なお、最後になりましたが、田村さんのご協力に感謝いたします。

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