では、どうしたら、不況から脱出できるのでしょうか。ケインズの理論は単純明快です。もともと、需要が減ったから不況になったのだから、政府が需要を増やしてやれば景気は回復すると考えたのです。
先ほどの例では、需要量が100個から80個に減ったからリストラが起こったのだから、政府支出を増加し、需要量を20だけ増加させて需要量を100個に戻せれば、また、工場はフル稼働となり、労働者もたくさん必要となり、景気は回復するという理屈です。もちろん、政府の支出以外にも、中央銀行が金利を下げて設備投資や住宅投資などの需要を増加させても景気は回復します。
このように、ケインズは、生産量や所得、一国でいえば国内総生産(GDP)は需要の大きさによって決まると考えました。これを、「ケインズの有効需要の原理」といいます。
では、古典派理論とケインズ理論は、どちらが正しいのでしょうか?
経済学とは、現実経済を分析し、説明する学問ですから、良い理論とは現実経済を説明できる理論です。
好況時には、古典派の理論が当てはまり、不況時にはケインズの理論が当てはまります。ですから、古典派理論とケインズ理論は、現実経済の状態に応じて使い分けていくという考え方がオーソドックスなスタンスです。
★キーワード★
ケインズ
世界大恐慌の時期に、不況を説明する経済理論を考えたイギリスの経済学者。不況は需要が少ないから起こるので,需要を増やしてあげれば景気は良くなると主張した。この考えは,今日の経済政策の基礎となっている。
有効需要の原理
生産量や所得、一国でいえば国内総生産(GDP)は需要の大きさによって決まるというケインズの考え。
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