【国民や議会を説得できるのが本当の「強い大統領」】
制約された条件のなか、大統領が自分の考える政策を実行していくためには、何が必要になってくるのでしょう。
それは、アメリカ国民を自分のかかげる目標のもとで結束させることです。アメリカ国民の多くが大統領の考えを支持するようであれば、議会もそれにこたえざるを得ないでしょう。
同じように、議会の議員たちを(政党に関わらず)説得し、自分のかかげる政策について理解してもらうことも必要でしょう。
国民や議員たちもまたそれを望んでいます。大統領は有能な政治家であるよりも、アメリカ国民のシンボルとして、国民を団結させる精神的な支柱であることが求められているのです。これができる大統領が、まさに「強い大統領」であり、強いリーダーシップをとることができるのです。
このことを演出するため、大統領はしばしばマスコミに登場し、国民に語りかけるのです。
マスメディアを駆使した最初の大統領は大恐慌からアメリカを救ったフランクリン=ルーズベルトでした。彼がラジオを使って国民に語りかけた「炉辺談話(ファイアサイド・チャット)は、大恐慌や第2次世界大戦で揺れるアメリカ国民を大統領のもとに団結させる大きな力を生み出しました。
テレビ演説を上手に使ったのが1980年代の大統領ロナルド=レーガンです。彼は政治家としての能力はあまりありませんでしたが、国民をまとめることでは天才的な能力を発揮しました。
彼はアナウンサーや俳優をやっていた経験を活かして、スピーチ原稿には全て自分で手を加え、分かりやすい言葉でやさしく国民に語りかけました。彼は自分を「アメリカの父」であるように演出し、国民からの支持を得ることに成功したのです。
してみると今の大統領の父でレーガンの後任だったジョージ=ブッシュはそのような演出は今いち苦手としていたようで、それが再選失敗の原因の1つだったのかもしれません。
その点クリントン大統領は最初から最後まで女性スキャンダルにまみれていましたが、その若さと率直な言動でもって土壇場のところで国民を引き付け、納得させる才能にたけていたといえます。
もちろん、大統領の強い権限はその説得力のおおきな原動力です。その権限でもって情報を操作し、「団結の象徴」としての自分を巧みに演出するわけです。
さて、ブッシュ大統領は、アメリカ国民を「対テロ大規模報復」という目標のもとに団結させることができたでしょうか。現在は成功しているようですが、大事なのはそれを維持していくこと。今後も、ブッシュ大統領のテレビ演説がたくさんみられることになりそうです。
●アメリカ合衆国憲法 かなり日本の憲法と雰囲気違います。
●米国政府要人略歴 ブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官などのことがかなりくわしく説明されています。
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