■具体例でシミュレーション
家を新築したときにかかった工事費が同じであれば、耐久性のあるほうが、当然のことながら、年間コストは安くなります。では、具体的データで見ていきます。(データ提供:旭化成 へーベルハウス)
建築するときの工事費が3000万円で、60年の耐用年数のある住宅(以下、A住宅と呼ぶ)と、工事費が2700万円で30年の耐用年数の住宅(以下、B住宅と呼ぶ)があったとします。どちらも、45坪程度の2階建てという想定で考えることにして、60年と30年の住宅の一生にかかるコストを比較してみます。
[A住宅の場合]
・新築費(周辺工事含む) | 3000万円 |
・外装・埋設設備のメンテナンス | 990万円 |
・その他のメンテナンス | 400万円 |
・生活変化をともなう改装費用(3回で) | 700万円 |
・解体費用 | 300万円 |
すべての合計 5390万円 |
[B住宅の場合]
・新築費(周辺工事含む) | 2700万円 |
・外装・埋設設備のメンテナンス | 600万円 |
・その他のメンテナンス | 100万円 |
・生活変化をともなう改装費用(1回で) | 100万円 |
・解体費用 | 225万円 |
すべての合計 3725万円 |
上記にあげた外装・埋設設備メンテナンス(A住宅では990万円、B住宅では600万円)とは、屋根、外壁、外装金物の塗装などにかかる費用のことです。また、その他のメンテナンス(A住宅では400万円、B住宅では100万円)とは、給湯器、エアコンの室外機など屋外設備を10年ごとに交換する費用を見込んでいます。
そのほかに、B住宅の場合には、築15年程度で、子供室に間仕切り収納を取り付け、子供室をふた部屋にすることと、リビングの一角にホームオフィスのコーナーを造作するリフォームをしたとして、改装費用を見込んでいます。
一方、A住宅にはB住宅同様のリフォームのほかに、築30年目と、築45年目に合計3回リフォームすることを想定しています。築30年目では、高齢になった母親を介護するために1階にシャワールームとトイレを設置するという内容です。築45年目には、玄関を共用としながらも内部で分離度の高い二世帯住宅にリフォームすることを考えています。1階を親世帯とし、2階を子世帯とし、専用のリビング・ダイニング・キッチンを増設することにします。このように3回のリフォームで、合計700万円の費用を見込んでいます。
そして、A住宅もB住宅もどちらの住宅も、解体することになったときの費用として、225万円と、300万円を計上しています。
■年間、月々のコストで考える
両方の合計金額を、住宅の耐用年数で割ってみると、それぞれの年間のコストが出てきます。5390万円÷60年=89.8万円に対し、3725万円÷30年=124.1万円です。これを月々に計算すると、10.3万円と、7.4万円。これは家を建てたときの住宅ローンの返済額と修繕積み立て費の合計にあたります。
こうして比べてみると、意外にも、新築費が高く、リフォームの回数も多いA住宅のほうが、住宅の一生にかかるコストは安くなりました。新築当初に安いと思った家が、住宅の一生のコストの中でとらえると、かえって高くなる可能性があるわけです。耐久性の違いが、住宅のコストを大きく左右するので、新築時のコストと耐久性の両方を併せて、考えることが重要なのです。