■常に居心地のよい住まいを追求する
ここに横山大観が住居を構えた当初は狭かった敷地も、画家として大観の評価が高まるにつれ、少しずつ拡大していき、1919(大正8)年に、ほぼ現在の規模となったそうです。この住居を横山大観はとても気に入っていたようで、多くの作品がここで生まれました。しかし、1945(昭和20)年、東京大空襲によって、家屋も庭の木々もすべて焼けてしまったそうです。一時、熱海の住まいに移りましたが、9年後、旧宅の基礎を用いて、まったく同じ間取りの家を建てました。大観がこの住居を再建したのが、なんと86歳のときだというのは、驚きです。
86歳という高齢であってもなお、この住まいを再現したということを考えれば、この家は大観にとって、非常に居心地のよい、思い入れのある住まいだったのでしょう。再建のため、私財のほとんどをつぎ込んだというのも、それだけ愛着が強かったのだと思います。大観にとって住まいは、暮らしの場であり、制作の場ですから、重要なものだったことは理解できますが、それにしても、住宅に熱い情熱をもつ姿勢は、学ばなければなりませんね。
■ピクチャーウインドウで生活を豊かに
2階の和室が大観のアトリエだったそうです。ここで多くの作品が生み出されたのですが、自然光をうまく取りこめるように、高い位置に明かり取り用の窓が設けられています。また、障子を採用しているので、室内には柔らかな光があふれます。また、東側の窓からは、不忍の池がちょうどよく見えるようになっています。
聞くところによると、この窓の配置に横山大観はとてもこだわったのだとか。不忍の池を眺めながら、創作に打ち込む大観にとって、ピクチャーウインドウの存在は、とても重要だったのでしょう。何か、こうしたこだわりのポイントを住まいにもつことも必要ですね。
■こだわりや思いをが注がれた家には愛着が深まる
中庭によって、光や風をふんだんに取り入れることを考えた設計や、居心地のよさを追求するために窓の位置ひとつにもこだわる姿勢など、私たちの家づくりにも学べることが横山大観邸にはありました。やはり建て主がこだわりをもって心を配らなければ、愛着のある快適な家にはならないのです。そうしてでき上がった家に対する愛着はますます深まり、大切にされ、長く暮らしていける家になるのだと思います。
財団法人 横山大観記念館
東京都台東区池之端1-4-24
電話03-3821-1017
営団地下鉄千代田線・湯島駅より徒歩7分
10時~16時(入館は15時45分まで)
開館日 木・金・土・日曜日
休館日 月・火・水曜日(ただし、祝日臨時開館あり)
長期休館 梅雨期(6~7月)、夏期(8月)、
年末年始(12~1月)*8月20日まで長期休館中
入館料 大人500円(80円) 小学生200円
(20名以上の団体割引あり)
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