古民家/古民家探訪

古きよき住まいを訪ねて~第5回~ 横山大観邸に学ぶ都市住宅の手法

日本画の巨匠、横山大観邸には、日本庭園や窓の取り方など、大観のこだわりがありました。さらに、中庭をとることで、家の中心まで光と風を取り込み、開放的な空間にするという手法は、現代住宅にも通じる手法です。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド



■こだわりや思いが注がれた家

東京・上野の池之端にある横山大観邸に行ってきました。横山大観が90歳で亡くなるまで暮らしていたこの住まいを見て、アプローチのつくり方や中庭をとって通風・採光を確保するなど、現代の都市型住宅に通じる設計上の手法を発見しましたので、そのあたりを中心に、どんな家だったのか、ご紹介しましょう。

■アプローチの工夫で彩りのある演出を

横山大観は説明するまでもない、日本画の巨匠。その大観の住まいは木造2階建てで、もともとは1909(明治42)年に建てられたものですが、戦災によってすべて焼失してしまったのを、1954(昭和29)年、再び同じ場所に、基礎をそのままいかしてに再建したものだそうです。この建物は上野の不忍の池のそばにあります。周囲には中高層の建物が多く、その中に取り残されたように建っているのが印象的でした。

どっしりとした木の門をくぐってから玄関までのアプローチには、石が敷き詰められ、植栽が施されています。それほど長いアプローチではないのですが、訪れた人はその門の中に入った途端、都会の喧騒を一瞬、忘れてしまうでしょう。庭先に植えられた木々の緑によって、別世界が広がっているのです。

門から玄関までのアプローチのつくり方で、豊かな演出ができるというよいお手本のようです。
 
木の門を一歩入ると木々の緑が目に飛び込んできて、とてもやすらげます敷石の上を進み、くぐり戸を通って玄関へ誘導されるアプローチです


■中庭をとって明るく、風通しのよい家に

横山大観邸の敷地は、東西にやや細長い敷地で、道路に近い東側に設けられた玄関(正確には玄関横の出入り口)から建物内へ入ると、中庭があります。左手に客間があるので、この家を訪問した人は必ずここを通ることになるのですが、この中庭のおかげで家の中ほどまで光が差し込み、玄関付近や客間までの廊下が明るく、風通しもよくなっているのです。客間の奥には日本庭園があり、そこに通された人は庭を眺めながら、もてなしを受けたことでしょう。

この横山大観邸のように、中庭をとることで、家のすみずみまで通風・採光を確保したり、家の中心でも開放感を味わえるようにするという設計手法は、現在のように密集した都市にも通じる方法だと思います。
  • 1
  • 2
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます