突然ですが、私はクルマ好きです。特に、なにげないセダンでも美しいカタチをしている欧州車が好きなのですが、そんなヨーロッパ製のセダンを見ているとフト考えることがあります。それは、機能がデザインを決めているということです。いえ、正しくいうと機能がもつイメージをうまくデザインに取り入れているなぁ、ということです。
そして、最近のハウスメーカーがつくる住宅デザインには、ヨーロッパ製セダンと同じような考えで、デザインされているのでは?と、思えるものがあることに気づいたのです。そこで、今回は、車と住宅を結びつけて、デザインの話をしてみたいと思います。
車のデザインにも、住宅のデザインにも、機能をイメージさせるものがうまく形になっていると感じるものがあるのです |
BMWとメルセデスのデザインのヒミツ
さて「ヨーロッパ製のいいクルマ」というと、あなたは何を思い浮かべるでしょう? BMW?、それともメルセデス・ベンツですか? どちらもヨーロッパだけでなく世界を代表する高性能車で、日本でも大人気ですが、この2車に共通するデザイン手法があるのををご存知でしょうか?
それは、この2車ともに、あの有名なフロントグリルとエンブレムを取り去っても、どこから見てもBMWはBMW、メルセデスはメルセデスとわかるようにデザインされているということなのです。
例えばBMWは、おなじみのデザインの「アイコン」として有名なエンブレムのほかに、フロントのキドニーグリル、ヘッドランプとそのカバー、リアのドアの窓の後端のカーブ、ストップランプのデザインを使っています。これらのデザインは微妙にカタチを変えながらも、同一モチーフのデザインをいろいろなモデル間で採用しています。つまり、これらのデザインを使用することによって、最上級セダンの7シリーズから、コンパクトサイズの1シリーズまで、ひとめでだれにでもBMWとわるようになっているワケです。
でも、これらのデザインは、BMWを認識させるためのもので、これだけで、BMW=高性能車の図式ができ上がっているのではありません。BMW=高性能車をイメージづける、そのヒミツとは何なのでしょうか?
デザインイメージは機能が決める
実は、BMW=高性能車をイメージづけるデザイン上のポイントは4つあるのです。
第一は、そのフォルムです。BMWやメルセデス・ベンツは、普通のセダンでも「ウエッジシェイプ」を採用しています。フロントが低く下がり、リアに向かってだんだん高くなっていくクサビ型をとっているのです。
第二は、大きなホイールとタイヤを使用していることです。同じ2000ccクラスで比べて見ると、国産車は15インチホイールに幅195ミリ、扁平率65%のタイヤを使用するのに対して、BMWは16インチホイールに幅205ミリ、扁平率55%のタイヤを使用しています。
第三は、オーバーハングが短いこと。オーバーハングとはタイヤからボディの端までの長さのことです。BMWは特にフロントのオーバーハングを短くしている傾向があります。
オーバーハングとはタイヤからボディの端までの長さのこと。これが短いといかにも素早く走りそうなデザインに見えるはずなのです |
第四は、ボディをヨコから見た場合、タイヤハウスの上端からボンネットフードの上端の長さが短いことです。
さて、これらのデザインポイントを採用するとどんなクルマになるのでしょう? それは「低く前下がりに身構えたボディの四隅に大きな車輪(ホイール)を置く」ということになります。いかにもよく走りそうなデザインだとは思いませんか?
これらの基本ポイントはメルセデスなどにも取り入れられていて、このことからセダンであっても欧州車はよく走るというイメージがつくられているのだと感心してしまうのです。
さて、ここまで長々とクルマの話をしてきましたが、実は、同じようなことが、ハウスメーカーがつくる最近の住宅にもいえると思うのです。それについては次ページで。