住みたい街 首都圏/キケンな街の見分け方

東京でいちばんあぶない町!(2ページ目)

いつか必ずやって来るといわれる大地震に備え、住宅を購入するときは震災対策を考える絶好の機会にもなります。危険と判定された地域の事例を参考にして、自分が住む地域の特性を十分に理解することも重要ですね。

執筆者:平野 雅之


総合危険度1位の町

建物倒壊危険度、火災危険度、避難危険度のそれぞれについて順位が付けられているわけですが、まず最初にこれら3つの指標を合わせた 「総合危険度」 についてみてみましょう。

「総合危険度」 が高いエリアは、下町エリアのほか、区部城北エリア、城南エリアに広がっています。このなかで 「総合危険度」 ワースト1となったのが足立区千住仲町。逆に東京都内で最も安全 (5,073位) とされたのは武蔵村山市残堀三丁目です。

足立区千住仲町では老朽した木造家屋が多いうえに、細い路地が複雑に入り組み、いざというときの避難経路の確保も課題になるかもしれません。また、火災発生時などに緊急車両が進入できない箇所も多く、初期消火などにおける住民同士の連携も大きなカギとなることでしょう。


細くて入り組んだ路地が多い。老朽した建物には、敷地いっぱいまで倉庫などを増築した例も目立つ。

老朽建物だけでなく、ブロック塀にも危険が潜む。万一のときには上からの落下物にも気をつけたい。

足立区千住仲町では、建築基準法による接道義務を満たしていないものと推定される老朽建物がいくつか目につきました。いわゆる 「再建築不可」 のものであり、耐震性を備えた建物への建替えもできず、また、建替えの大きなきっかけとなる土地売買の機会も逸してしまっていることでしょう。建物と生活の安全を目的とした建築基準法が、建替えの意欲を削ぎ、これら老朽建物における耐震対策を阻害しているのだとしたら皮肉な結果ですね。

なお、 「総合危険度」 ではワースト1となってしまった足立区千住仲町ですが、建物倒壊危険度では51位、火災危険度では71位、避難危険度では58位となっています。それぞれの危険度では足立区千住仲町よりも危険な町が50箇所以上存在するわけですから、なかなか安心はできませんね。


建物倒壊危険度1位の町

東京都内で 「建物倒壊危険度」 が最も高いとされたのが墨田区京島二丁目です。この地域では老朽家屋が多いこともありますが、地盤の弱いことが大きな特徴となっています。墨田区エリアは隅田川や荒川による三角州状の低地が江戸期に埋めたてられたものであり、全域が沖積低地の 「東京低地」 に属する軟弱地盤とのこと。建物を建築する際には十分な基礎の補強策が求められます。

墨田区京島二丁目ですぐに気がつくのは、少し傾いた電柱がいくつも存在すること。1本だけが傾いているのであれば施工不良のケースも考えられますが、それが複数の場合には地盤が弱いことの証拠ともされます。


建物に近接して立てられた電柱が傾いている。傾いた電柱がいくつも確認できる。

エリア内には老朽した建物も多い。窓枠などが変形した建物も。
細い路地の奥に家が建ち並ぶ。建物自体が既に傾いている。

既存建物の耐震補強工事をするにしても、あるいは十分な基礎対策を講じて建替えるにしても、すべて個人任せでは経済的に困難なケースも多いことでしょう。行政側による積極的な支援を期待したいところです。なお、墨田区京島二丁目を含む周辺地域では町内会などによる防災訓練なども積極的に行なわれている様子。災害時の避難には地域住民の相互協力も欠かせませんが、墨田区京島二丁目の 「避難危険度」 は1,990位となっており、耐震対策が進めば比較的安全な町へと変貌する可能性もあるでしょう。

この記事掲載後の平成17年5月25日における日本経済新聞報道によれば、住宅金融公庫が東京都墨田区と協力し、木造住宅が密集するエリアの再開発支援に乗り出すということです。今後の動向にも注目していくことにしましょう。



page1 ≪前書き
page2 ≪総合危険度/建物倒壊危険度≫
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page4 ≪犯罪危険度



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