建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

コンパクトで住みやすい住宅 難波和彦さんの箱の家51

95年の第1作から脚光を浴びた「箱の家」シリーズ。「都市住宅として最低限の性能を最小限の物質によって達成する」というコンセプトから生まれた「箱の家」の51番目の家を見ました。

執筆者:坂本 徹也

テーマは「サステイナブル」という完全外断熱の箱の家51


東京・大田区久が原に建った難波さんの箱の家51を見てきました。
ほんとにシンプルな長方形の“箱”を、いくつかの間仕切りによって 小空間に分けていったタイプの箱の家です。難波さん自身も「少し分化が 進行した箱の家です」と言っているように、わりとふつうの家という感じ。

いま一度、ここで箱の家のコンセプトをおさらいしておくと、それは 「都市住宅として最低限の性能を最小限の物質によって達成する」というもので、その条件は吹き抜けのある一室空間やドアのない子ども部屋、単純な箱型のデザイン、ローコストで高性能といったものでした。しかし箱の家も 51作目ということで、その形やテーマも少しずつ変化しつつあるようです。

第1ステージは「標準化」、第2ステージは「多様化」、そしていまは第3 ステージの「サステイナブル化」にあたるというわけですね。 サステイナブル(Sustainable)は、接続可能なとか環境を破壊しないと いった意味で、この久が原の箱の家51もほとんどが自然素材を使った家です。 いつもそうですが、非常に小さな家なのに、その正面の顔はどこかゆとりを 持って大きく見えるようにデザインされていて、すごくいい感じ。 玄関を入ると、シナの木と合成材からなる廊下と壁面が続き、小部屋が 3つに分かれています。4人家族ということですので、やはり個室を複数確保 したのでしょう。壁は何も処理がされておらずむき出しですが、ぷんと 木の香りがただよい、これはこれでローコストのよさを感じます。
 

 

2階に上がると、ここは天井を高めに取ったロフトを持つ大リビングになっています。一室空間的なイメージの残っているところはここぐらいで、奥には 仕切りのある2つの小部屋があります。そのひとつがリビングを見下ろすロフト付きの子ども部屋というわけです。ここはちょっと隠れ家的なDENのイメージで、なかなか快適そう。壁はやはり木の合成材のむき出しですが、かなりのスペースに小さな棚が付けられていて、本とかを立てられるようになっています。収納の少なさを壁を使って補っているわけですね。

たしかに「分化が進行した」箱の家であって、それは初期のものとは 違いますが、何よりも都市住宅をいかに最小限の物質によって達成するか という難波さんのコンセプトをしっかり貫かれていて、ローコストを 楽しもうという提案の強さがメッセージとして伝わってくる一軒でした。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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