建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

住宅街の小宇宙「木月の舎」 ドーム型の店舗兼住宅

前田光一さんと鈴木典子さんの共同設計となる店舗兼住宅が、川崎市の元住吉に完成したと聞いて見てきました。「木月の舎」の名の通り、半月状のドーム建築です。

執筆者:坂本 徹也

住宅街にぽっかり現れた異空間「木月の舎」は
うまい酒が飲める店



「木月の舎」は、前田光一さん(包建築設計工房)と鈴木典子さん(典設計工房)が共同設計で建てた店舗兼住宅。東急東横線の元住吉の商店街を抜けたあたりにそれはあります。まわりは駅近の住宅街。それもそのはず「木月の舎」は、気軽にちょっと一杯ひっかけたいときに立ち寄るような飲み屋さんなのです。

しかしその形は、「木月の舎」の名にふさわしく半月状のドーム。シルバーメタリックの外観はきっと夜には不思議な光を周囲に放つことでしょう。だけど「なかなか粋なネーミングだな」と感心していたら、なんとこのあたりは木月という地名で、「木月の舎」の由来はただの地名だとのこと。つまり先に地名があって、この形状を思いついたというのが本当のようです。

 

小さな前庭を横に見ながら中に入ると、木組みの構造をそのまま見せる形の半月状の天井がど~んと。なるほど木造だから、まさしく「木月の舎」の名の通りです。店内はカウンター席のみですが、店主と客とが対面しながら美味しい酒と肴を味わえるような、親しみある造りになっています。店内のイメージカラーは黒、これは月の内部だからということでしょう。逆に木の素材感があたたかみを演出しています。

カウンターの奥はキッチンとなっていますが、これは居住空間との兼用。店主の食事もここでつくるわけですね。そしてこのキッチンが浴室に繋がっていて、そこからが居住部分となっています。居住部分は店舗と平行につくられ、その長方形のスペースに前庭に面した小部屋が繋がっています。

さらに店舗との仕切りの壁に沿った形で2階への階段が…。2階はずばり店舗をそのまま見おろすロフトのような場所。そこからはこの建物の全体像が見渡せるわけですが、なにか住宅の模型を上から覗き込んでいるような錯覚になる。それほどこの建物がシンプルで、大胆でわかりやすい構造体だということでしょう。お店が満席のとき、ちょっとここに上がって、上から人間たちのちっぽけな営みをゆっくり眺めてみたいものです。

設計監理:前田光一(包設計工房)
      http://www.c-channel.com/c00450/
      鈴木典子/典設計工房
施工  :藤島建設

建築面積:88.08m2
延床面積:77.03m2
構造  :木造2階建て

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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