建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

細谷功さんの「A HOUSE」

細谷功さん(細谷功+スタジオ4設計)が港区西麻布に建てた都市型店舗兼住宅を見てきました。店舗や住宅が密集している都心に快適な住環境を実現するのが得意という細谷さんならではの一軒です。

執筆者:坂本 徹也

装飾性を排したシンプルさはいっそ清々しい

建物上部はすべて居住空間、スチール製の雨樋が造形的で美しい

細谷功さん(細谷功+スタジオ4設計)が港区西麻布に建てた都市型店舗兼住宅を見てきました。場所は西麻布の交差点から歩いてすぐ、まさに都心中の都心です。こうした店舗や住宅が密集しているような場所では、外に対してどうしても閉鎖的な建物になってしまいがちですが、細谷さんは外に向けては閉じながらも、いかにして内部に光や外景を取り込むかを考えつつ、快適な住空間を実現されていました。

1階にはアンティークの店舗の入居が決まっている

玄関ポーチと兼ねたガレージの入り口
手前にいるのは設計者の細谷さん

1階の店舗スペースは別として、居住階の外観はまさしくコンクリートの一枚壁。外に向けて開いているのは、玄関ポーチ兼ガレージのエキスパンドメタルの引き戸のみ。素っ気ないぐらいのシンプルさです。細谷さんは「あまりごちゃごちゃしたデザインは好きじゃない」と言われていましたが、この装飾性を一切排したシンプルさは、この場所にあってある種の潔よさ、清々しさを感じさせてくれますねー。

玄関ホール
このシンプルさはいっそ潔い
あちこちにスリット状の
明かり取りのある階段室

ポーチを通って玄関を入ると、目の前は上階へと続くグレーチングの階段室になっています。細かい目のグレーチングは、できるだけ建物内に光を取り込もうという細谷さんの配慮でしょう。また、階段室にはいたるところにスリット状の窓が開けられており、ここでも外からの自然光の導入が図られています。
グレーチングの階段には好き嫌いがあるでしょうが、ここに使われているものはとても目が細かいため、素足で歩いても快適。見た目よりは頑丈だし広がりが出るし、いいのではないかと思います。

1階から最上階までの吹き抜けを設けて自然光を取り込む

2階に上ると目の前に化粧室、右手にはガラス張りの小部屋(収納室)があります。収納室をガラス張りにしたことで、このスペースはかなりの開放感。収納室はそのまま物置として使うのはもったいない。建て主さんはアンティークの家具をたくさんお持ちとのことですが、そうした工芸品的な家具を見せるための部屋として使われれば、最高なのではないでしょうか。

超スッキリとした洗面室
ガラス張りの収納室
ギャラリーとして使える

この階は階段室とこの小部屋を境に、左手が子ども部屋、右手が寝室という構成になっていました。両方の個室ともに、1階から最上階までの吹き抜けに向けて開かれた開口部がありますから、採光はバッチリ!

細谷さんは、コンクリートの外壁の中にこの2つの吹き抜けを設けることによって、各階の採光と外との“繋がり”を確保したわけですね。また、2階から始まり3階へと続く居住空間の床には、耐摩擦性にすぐれた白いホモジニア・タイルを使用。生活の場すべてにガス温水式床暖房を配して、快適性を追求しました。

ウォーキングクローゼットを開いた状態の主寝室
床はホモジニア・タイル

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