401kを入れれば会社の責任がなくなるのは間違いだ
一般に、会社が企業型の401k(確定拠出年金)を導入すると「会社の責任がなくなる」といわれます。確かに資産運用の決定は社員ひとりひとりが行い、その結果が自己責任ということになります。企業年金の資産の運用から支払いまでの責任がなくなり、会社の債務も大きく軽減されます。しかし、これをもって「会社の責任がなくなる」と言い切ってしまうのは間違いです。社員に自己責任を求める前提は、社員が自分で資産運用の判断を行える程度の知識や能力を有していることだからです。一般に日本人の資産運用経験や知識は不足しており、いきなり自己責任というわけにはいきません。
そこで、「投資教育」を会社が社員に対して提供することが求められています。これは法律上の義務としても規定されており、制度を実施する会社の責任となっています。
(それでも十分な投資教育が実施されている状態にはないため、401k導入企業の大きな問題となっています)
それでは「投資教育をすれば会社の責任はOK」といえるものでしょうか。実はそう簡単なものではありません。企業年金連合会が昨年12月15日に公表した「企業型確定拠出年金制度運営ハンドブック」がそうした問題を指摘しています。今回はやや専門的な話になりますが、401kを採用した会社の役割や責任について少し考えてみます。
「自己責任」は実は自己責任のもと発揮されていない
簡単に「自己責任」といいますが、企業型401kの資産運用における自己責任は、一般的な資産運用における自己責任とは様子が異なります。個人が資産運用をするなら、「証券会社をどこにするか」「どの銘柄・投資信託を買うか」「いくら運用をするか(しないか)」「いくら追加拠出をするか(しないか)」「いつ買うか(買わないか)」といった選択を自分で自由に行うことができます。その結果として、資産運用がうまくいかなかった場合の責任は自分で負うわけです。
企業型401kでの「自己責任」は少し様子が異なります。金融機関は会社が指定したものを利用しなくてはなりません。運用の対象となる商品リストも会社が指定します。毎月いくら積み立てるか、スタート時点で他の制度からいくら資産が引き継がれるかなども会社の制度として定められてしまいます。購入のタイミングも毎月一定日とされてしまいます。(なお、選択・決定に労使合意を要するものもあるが、一社員が自由に意見を述べられるわけではない)
つまり、自己責任には一定の制約が課せられているというわけです。「A社ではなくB社の401kサービスが良かった」とか「C投信ではなくD投信がよかった」という希望はなかなか通りません。
であれば、その制約が社員に不利益をもたらしたとしたらどうでしょう。会社が「投資教育以外の会社の責任」として考えるべきポイントがそこにあります。
→次ページで、会社に求められる制度運営について考えてみます。