カブリエル氏はデザートが大の得意しっとりしていて濃厚。食べ応えも十分なメキシコ版プリン「フラン」。フラン(プリン)なら、あぁだいたい想像がつくわ。いわゆるプリンでしょ。なんて思ったら大まちがい。メキシコの、いえテピートのプリンはちょっと違うのだ。牛乳と卵のほかに、なんとクリームチーズとココナツミルクまで入っている。しかも、ソースはコンデンスミルクを長時間煮詰めたもの。聞けば、ガブリエル氏はデザートが大の得意なのだという。品数は決して多いとはいえないのだが、甘党もそうでないかたも、ひと口でもいいからデザートをつままれることをおすすめしたい。(実はワタクシ、甘党ではないのですが、1カットをペロリとオナカにおさめてしまいました。)プロによる演奏にも注目したいこのほかにも、メヌード(牛の胃袋の煮込み)、ソペス(メキシコ版カナッペ)、トルティージャスープ……まだまだ気になる料理はたくさんあった。これはまた近いうちに、必ず再訪しなくては!一度口にしたら、他の料理もすべて試したくなるのが、ガブリエルマジック。さすがはメキシコで何百人もの客を収容できる店の料理長だった彼。そばにいるだけで穏やかな気持ちにさせられる、そんな温厚な性格なのに、仕事には人一倍きびしく真面目。そんな彼だからこそなせるワザなのであろう。次回への食事に胸を膨らませながら、数年ぶりにそんなことを思った。と、ここで忘れてはならない。この店の最大の特徴は、なんといっても音楽と料理の饗宴である。料理の素晴らしさは先に述べたとおりだが、こちらで聴ける音楽もまた極上。テピートはご夫婦で切り盛りされているのだが、ご主人のチューチョ・デ・メヒコさんは、なんとアルパ(ラテンハープの一種)やレギントギターの名手。日本でメキシコのプロ中のプロの演奏を月に何度か聴ける(1,500円1ドリンク付)のは、かなり貴重なこと。音楽もまた見逃せない。前のページへ1…345次のページへ