複雑!
|
スペシャリテの「ヴァランシア」(700円)。 |
抹茶以外では、1996年のシャルル・プルースト杯味覚部門で優勝を果たした「ヴァランシア」(700円)が有名。オレンジとナッツが織り成す魅惑的な味のハーモニーに、思わず絶句の一品です。
全体が6層ほどに分かれているのですが、白、茶、黒…、色の濃淡が非常によく表現されていて、ショーケースの中でもひと際目を惹く存在。嫌でも買いたくなってしまうはずです。
細かく見ていくと、上から順にコンフィチュールベースの「ムース・オラランジュ」(スペイン・ヴァランシア産のオレンジを使用)、シロップを打った「ビスキュイ・ショコラ」、やさしい風味の「ミルクショコラクリーム」(ヘーゼルナッツがゴロゴロ入っている)、濃厚な味わいの「プラリネクリーム」、深い芳しさを持つ「フィヤンティーヌ・プラリーヌ」、ネチッ&しっとり、風味豊かな「ヘーゼルナッツのビスキュイ・ダコワーズ」。そしてトップには、金柑を使った美しい飴細工のデコレーション。
|
非常に奥の深い一品です! |
最大の決め手はやはり「ムース・オランジュ」。口に含むと、シュワッと軽い口溶けとともに訪れるオレンジの濃縮された甘み&爽やかな香りが、他のすべてをやさしく包容。そして、ザクッ、サクッ、しっとり…、幾重にも重なるナッツの濃厚な香ばしさと、複雑かつ重厚な味の余韻をつくり上げるのです。「ビスキュイ・ショコラ」が双方を繋ぐクッション的役割を果たし、程よく香るコニャックの風味によって、味の一体感と奥深さ、さらにはどっしりとした風格が生み出されます。割合的には「ムース・オランジュ」の部分が最も多いのですが、風味上、それ以外の部分(すべてナッツ系)は1セットとして考えられるので、味のバランス的には一点の曇りもありません。オレンジとナッツがベストバランスで調和しながら、またとない幻想的な味を食べ手の脳裏に焼きつけてくれます。「味覚に訴えかける味」とはまさにこのこと。
次ページは、
傑作パウンドケーキについて。