うつわの魅力
パンケーキをのせた白い、繊細なゆがみを持つお皿のフォルムの美しいこと。多治見の陶芸作家、安藤雅信さんによるオランダ皿です。コーヒーや紅茶が注がれるのは、井山三希子さんによる粉引きのやさしい手ざわりのの蕎麦猪口。
関谷さんが自宅で使用していたものも多いというそれらのうつわたちは、cafeももちどりの空間にしっくりとなじんでいます。
関谷さんがうつわの魅力に強く引き寄せられるようになったのは、インテリア雑貨ショップで働いていた時代のこと。関谷さんにとって、質感の豊かなうつわは、おいしいものを発想する原動力となってくれるものだそう。
「たとえば安藤雅信さんの銀彩皿には、ルッコラの緑いろがよく映えるんです。このお皿にはどんなお料理をのせたら合うだろう……そんなふうにイメージをふくらませるのが好きです」
店内の小さなギャラリーのコーナーには表情豊かなうつわたちが並んでおり、購入することも可能です。
「お店の空間づくりは、まだまだこれから」
お店は築30年になる小さな建物の2階にあり、もとは鰻屋さんとして使われていた物件。天井から下がる小さな灯りや、ミシン脚のついた木のテーブル(写真上)は関谷さんの自宅で使われていたもの。
改装は関谷さんが大工さんと直接やりとりしてして、限られた予算と期日の中で仕上げてもらったそうですが、完成してみるとあちこちに「こんなはずでは……」という箇所が散見されるそうです。その筆頭が床板の色。
「床が明るすぎて家具の色と同化してしまいました。これから時間をみつけて、自分で暗いトーンのオイルステンを塗ろうと思います」
お客さまが座る空間にはあまりモノを飾って自己主張をしないように気をつけながら、より自分らしいお店に近づけていきたい、と関谷さん。正直なところ、和の要素と洋の要素が違和感なく溶け合ったこの雰囲気は、私には今のままでもたいへん魅力的に感じられるのですが、オーナーにとっては胸に思い描くイメージとのギャップが気になるのでしょうね。