フラヌール=都市の遊歩者
街歩きの楽しみを語るとき、よく引き合いに出されるのが哲学者ヴァルター・ベンヤミン。その著『パサージュ論』の中でベンヤミンは、群衆の中に身を隠して都市の街路をさまよい、街のできごとを観察する散歩者たちをフラヌール(遊歩者)と呼びました。2005年8月、この言葉をそのまま店名にしたカフェが外苑前の裏通りに現れました。4階建ての小さな古いビルを改装し、1階はキッチンに、2階と3階に椅子やテーブルを配して客席に。2階は面積が広めのテーブルがどこか図書室を思わせるダイニング、3階はソファが並ぶラウンジです。
2階にも3階にも階段をのぼっていかなければなりませんが、踊り場のさりげない演出が独特の雰囲気を作り出し、また夕方からは階段に美しいキャンドルの炎がゆらめいて、この階段の上り下りが<カフェの中の遊歩>となるのです。