ピエール・エルメ氏 |
スイーツ界のピカソとも称され世界中の洋菓子業界に多大な影響を与えるピエール・エルメ。 東京・赤坂のホテルニューオータニに1998年9月“ピエール・エルメ パリ”がオープンしてから昨年で10年。当時、パリの老舗洋菓子店「ラデュレ」のシェフパティシエだったピエール・エルメ氏が、世界初の自身のブディックを東京にOPENさせたことは、洋菓子業界に衝撃を与えました。
あれから10年が過ぎ、日本国内で知らない人はいないほどの有名ブランドに。世界で最初に日本に出店されたきっかけ、グラスデザート“エモーション”へのこだわり、新しいフレーバーについて等伺いました。
Q.世界初の店舗を日本に出されようと考えられた理由やきっかけは何ですか?
世界の中でもフランス以外では、日本にはパティスリーが多くレベルの高さも感じていました。 そのような中、1997年ホテルニューオータニでデザートのイベントに招待され、それがきっかけになり、ホテルニューオータニに1998年に世界初のブティックをOPENすることになりました。
Q.エルメ氏にとってスイーツでもっとも大切にされていることは何ですか?
“味覚のアーキテクチャー”を大事にしています。“アーキテクチャー”は建築ではなく構築を意味し、ものを作るには見た目ではなく、味の構築が最も大事で、デザインは後からついてくるものだと考えます。不要な飾りは付けず、味覚が最も大切です。
Q.2001年からグラスデザートであるエモーションを発表されていましたが、その名称の由来、そして何故グラスを使おうと発案されたのか教えていただけますか?
エモーション フラゴラ ¥945(バルサミコビネガーのジュレ、イチゴのジュレとスパゲッティ、マスカルポーネクリーム、イチゴの組み合わせ) |
レストランならば、出来たてをすぐに食べることができるアシェットデセールがあり、極限の柔らかさを表現できますがパティスリーではテイクアウトのことを考えると難しくなります。グラスを使うことで不可能だった組み合わせのスイーツができるのが、エモーションの魅力でしょう。 グラスの固い構造をつかうことで、柔らかな状態のもの、ゆるいゼリーのようなものも使用できます。
ケーキでは表現できないものを実現することができ、エモーションにしかできないテクスチャーを表現したかった。そうすることでテイクアウトでご自宅でも、繊細な舌触りのデザートを楽しめるのです。
エモーション イスパハン\840(ライチのジュレ、フランボワーズコンポート、ローズ風味クリーム、フランボワーズ) パリにあるピエール・エルメのブティックで2001年に初めていただいたエモーションが“エモーション イスパハン”でした。 一番下には爽やかなライチのジュレ、さらに程よい酸味のフレッシュフランボワーズのジュレとフランボワーズのコンポートが重なっています。 さらにローズの香りがする滑らかなクリームの上に、ローズのマカロンでフタをしています。本物のバラの花びらの上には、透明のジュレを一滴つけて、朝露のように見立てているところがロマンチック。グラスの中で、それぞれの素材が重なり、横から見ると赤と白のコントラストが美しい。 |
次のページでは、グラスデザート“エモーション”を2001年に発表し、いわばグラスデザートのブームのきっかけを作られたといえるピエール・エルメ氏に、ここ数年大流行のグラスデザート“ヴェリーヌ”について伺いました。