「武蔵」の味を作り、「武蔵」全般における味の総責任者で店員からは「頭(かしら)」と呼ばれている山田氏。これまでの「武蔵」は山田氏の影響が相当色濃く出ていたと言ってもいい。しかし、今回の「武骨」はひと味違い、かなりの部分を今回の店主である矢都木氏に任せている。
そのため、いろんなところに「らしくない部分」がある。もちろん、「らしさ」もある。ただ、相対的には「らしくない」ところが多いと思う。
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また、ユニホームは、山田氏が納得いってないものを矢都木氏が強引に説得したようである。
もっとも今回のスープのベースである「豚骨白濁」は、山田氏の範疇外でもあった。ある意味、今回の武骨プロジェクトは「任せる」ところから始まった、と言ってもいいだろう。しかし、そうした中にも「誰もやってないことをやる」という武蔵流は生きている。
豚骨は骨の髄からコラーゲンを抽出しやすくするために、割ってから使う。しかし、あの体重を支えてる骨な訳だから、そう簡単には割れない。割れやすいところ、つまり、細くなったところを「折る」ように割るのが一般的だ。ところが武蔵は、これを前例なしの「縦割り」に挑戦してみたのである。こうすることで、髄の溶解は早い。