ここ数年のラーメン過熱化は目を見張るものがある。もはや、東京全体が「ラーメン激戦区」と言っても過言ではない。そんな中でもさらなる激戦区がいくつか存在する。
まずは池袋。ターミナル駅は乗降人数も街の人口も多いので、店が多くて当たり前である。しかし、ここ池袋は尋常ではない。徒歩圏内の行列店の数では日本一だと思う。東は「大勝軒」から西は「麺屋ごとう」や「麺舗十六」など、かなり広範囲に行列店が存在する。そんな中でも飛び切り一番の激戦区が東口南池袋の五差路周辺である。「光麺」「無敵家」「ばんから」などが行列を作る。少し離れるが「屯ちん」も競合地区内といえよう。そんな状況の中にさらに家系の「玄武」と「麺屋武蔵」(新宿)のプロデュースによる「二天」が出店し、激戦にますます拍車がかかった。
池袋の特徴としては学生が多く、カップルが多い。「光麺」が女性をターゲットにしてデザートなどを用意し、ラーメンの裾野を広げる大きな貢献をしたがその土壌が池袋にはあったといえる。それと意外と単価が安い。「屯ちん」が600円で大盛り無料などという戦略を取っているのもターゲットが明確になっているからだろう。しかし、そこに殴り込みをかけた「二天」は、750円という価格で勝負に出てきた。今後のこの界隈の行列の推移に目が離せない。
次に高田馬場〜早稲田の早稲田通り沿い及び明治通りと交差するその周辺。ここは、滞在人口の割りにもの凄い激戦区である。元々、高田馬場は激戦区として存在していた。しかし、一時、低迷時期があり、さほど激戦区の様相を感じられなかったが、ここに来て「何ごとか?」というくらいの新店ラッシュが相次いでいる。昔からのお店としては「メルシー」「ほずみ」など、学生を対象とした低価格路線の店があり、これらはまだ健在だ。
さらに、「えぞ菊」「天下一品」「一風堂」など、資本力のあるところの進出が続いた。さらには創業が高戸橋の「元祖一条流がんこ」。現在では「総本家」は都電早稲田駅近くに。他に「西早稲田店」と「十六代目」がこの界隈にある。同門対決地域でもあるのだ。そうした状況の中にさらに波紋を広げる有名店・人気店の進出。札幌で絶えず人気投票上位の「純連(じゅんれん)」が初の支店を高田馬場に。学生に人気でどの店も行列を作る「ラーメン二郎」も出店。またラーメンコンサルタントを兼ねている店主が満を持して出した店が「渡なべ」。他にもここ1−2年で出した新店をあげるとキリがないくらい。高田馬場〜早稲田ラインは明らかにメインターゲットは学生である。そのあたりを意識するかしないかで、高田馬場の勝ち組になれるどうかが決まってくるような気もする。
最後に新宿だが激戦区として当たり前の場所である。しかし、実は店舗の数は間違いなく多いが池袋のように行列店が多いか、というとそうでもない。そんな中で注目すべき地区は西新宿の小滝橋通りである。この界隈には、前はラーメン店など無かった。入り口周辺には「げんこつ屋」「満来」などがあった。それ以外では、中華料理店が細々とやっている程度だったのである。しかし、そこに「麺屋武蔵」が出店したことで様相は一変した。対決を挑もうとしたのか、行列のおこぼれにあずかろうとしたのか、それはわからない。「麺屋武蔵」以降出店した店は「風来居」「ラーメン二郎」「はやし家」「竈」「鬼やんラーメン」「泰幸」「もちもちの木」「藤平」他。
ここは、別にターゲットになるべく人間は特にない。サラリーマンぐらいだ。しかし、こうして多くのラーメン店が密集することでここに多くの人間が足を運ぶようになるのである。そして、一つの人の流れが出来上がってしまうのだ。ラーメンはこんなにも影響力がある物なのである。
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