クリスマス用の特別な装飾をほどこす個室
「イタロプロバンスダイニング」から眺める夜景 |
「イタロプロバンスダイニング」の24万円のクリスマスプレステージディナー(1日1組)は、東京タワーの昼と夜の顔を知り尽くした、一般ダイニング奥の個室で提供。白いクロスがかけられた円形のテーブルは、8名まで対応可能なため、普段は接待や会食などでもよく利用されるのだそう。
と言うと、商用のシンプルな内装を思い浮かべますが、このプレステージディナーが饗される、12月19日~25日は特別。いつものシャンデリアに加え、クリスマスを盛り上げる装飾がなされるため、中の様子は、当日、行ってみてからのお楽しみ。
「シャンパンの花」がスターター
左:ペリエ ジュエ ベル エポック 2000年 ハーフボトル。中央:コルトン シャルルマーニュ ヴァンサン ジラルダン 2005年。右:シャトー ムートン ロートシルト 1993年 |
コースのスタートを切るのは、エミール・ガレが描いたアネモネのボトルデザインの「ペリエ ジュエ ベル エポック 2000年」ハーフボトル。イギリスのヴィクトリア女王やモナコ王妃グレースケリーなどに愛されたことでも有名な「シャンパンの花」です。
アミューズブーシュは、珍しいマロンスープ
セロリラブやカボチャが入ったカプチーノ仕立てのスープ |
この艶やかなスターターとともに愉しむのは、アミューズブーシュとしては珍しいスープ。ベースはマロンで、その上に泡立てたミルクをのせ、カプチーノ仕立てにしています。
ミルクには、ちょうど今から旬となるセロリラブやカボチャのエキスが混ぜられ、スープの底からも、小さな角切りがマロンとともにごろごろ出てきます。
料理にもお菓子にもなる、マロンとカボチャの甘いもの同士の組み合わせに、まろやかな苦味を添えるのが、この時期はピューレにしてもおいしいセロリラブ。そこに、パスタを揚げたようなシナモンのスティック状チュイルをクロスさせ、全体を引きしめます。
はちみつ漬けのフォアグラと薄切りパイナップルの饗宴
フォアグラのコンフィ フランボワーズのカラメルソース パイナップルとフヌイユのラビオリ アニスの香り |
前菜は、「フォアグラのコンフィ フランボワーズのカラメルソース パイナップルとフヌイユのラビオリ アニスの香り」。詳細を説明する前に、まず伝えたいのが、ものすごくおいしいひと皿であること。
鴨のフォアグラは、口に入れると、舌との境目がわからなくなるくらい、なめらかに、そしてまろやかに姿をなくしてゆきます。
この新食感の秘密は、生姜、オレンジ、カルダモン、シナモンなどを入れたスパイシーなはちみつに、12時間も漬けられていること。しかもその前の12時間は、塩、胡椒でしめられているため、表面をバーナーで炙っても、しっかりとした下味が生きています。
このように、フォアグラにはちみつが使われている上、横に置かれているのも、シロップ漬けのオレンジをあしらったクレープのようなパイナップル、ソースもバニラビーンズとバターを焦がしたキャラメル風味だったため、運ばれてきた瞬間、まず感じるのは、お菓子のような甘い香り。
サキサキした薄切りのパイナップルの中は、トニックウォーターを使ったフェンネルのジュレ。フェンネルハーブの葉や白い茎の角切りも入っているため、口の中が、ツーンとさわやかな甘さでいっぱいになります。
ワインのアフターフレーバーを強くするロワイヤル
伊勢海老のグリエとそのロワイヤル オレンジ風味の甲殻類のエミュルション |
次に出てきたのは、「伊勢海老のグリエとそのロワイヤル オレンジ風味の甲殻類のエミュルション」。ライムの皮を混ぜた、セロリの細切りで仕上げられています。
ロワイヤルは甲殻類のエキスを用いたと聞いたので、まずは濃厚さを感じるだろうと思いきや、先にキャッチしたのは、コアントローが放ったオレンジ香。予測していた濃厚さは、泡立てて軽くしてあるせいか、香水でいうと、残り香的な感覚で、後味を愉しませます。
このオレンジ香と伊勢海老の身が引き出すのが、アシスタントシェフソムリエの河戸雅盛さんいわく、ワインの中のミネラル香。これこそマリアージュとばかりに、合わせたのは、力強さと優雅さを兼ね備えた「コルトン シャルルマーニュ ヴァンサン ジラルダン 2005年」。緻密な醸造で評価の高い、ブルゴーニュ2大白ワインのひとつです。
ロワイヤルがあん肝のような食感だったため、少し固めかなと思い、聞いてみたところ、弾力のある伊勢海老に合わせるには、これくらいの固さが必要とのこと。そして、この伊勢海老の力強い甘さによって、どんどん強くなるのが、ワインのアフターフレーバー。男性的な印象がある筋肉質なワインだからこその味わいだそうです。
洗練されたもの同士は、決してケンカしない
黒鮑と海胆の自家製スパゲティー 肝ソースと共に |
前菜と並んで、ものすごくおいしかったのが、「黒鮑と海胆の自家製スパゲティー 肝ソースと共に」。
これは、みじん切りにした黒鮑を混ぜたスパゲティーを、クリームでのばした海胆のソースにからめ、白ワインをベースにした肝のソースでアレンジした逸品。鮑は通常、コリコリなどと表現されることが多いですが、最高級品を蒸しているため、その柔らかさは想像以上。
肝を使っているだけに、味は少し濃い目ですが、それだけに、白ワインを1本空ける楽しみと同時進行しそうです。ソムリエいわく、「赤ワインにお金をかける人が多いけれど、白が主役になることも充分ある。洗練されたもの同士は、懐が深いため、何を合わせてもケンカしない。馴染む不思議さも、おいしさの一部」。
鶏のダシとパンチェッタの脂がこっくり
厚めに切られた平目のソテー |
そんな話に聞き入りつつ、ナイフを入れるのは、「平目のソテー ムールと小烏賊のマリネと赤キャベツのエテュヴェ パンチェッタとエストラゴンのジュで」。
こちらは、平目の甘み、赤キャベツの酸味をともなう甘み、エストラゴン(タラゴン)ハーブの甘みが混じり合うため、もしかしたら「全体的にちょっと甘めかな」とも思う節も。でも、鶏のダシとパンチェッタの脂で仕上げたソースをつけると、どことなくこっくりとしてきます。
添えられているのは、パン粉をつけたホタテのムースをズッキーニで巻いたものと、青森産のヒイカとムール貝。平目は、身がとてもやわらかいのに、しまっているのも、食べる楽しみにつながりました。
次ページでは、メインのお肉料理と金粉をほどこした贅沢デザートをご紹介します!