ダニー氏が教える「マイ・フェバリット」の大切さ!
ダニー・マイヤー氏。「ユニオン・スクエア・トウキョウ」テラス席にて。 |
去る10月1日、東京ミッドタウン・カンファレンスルームにて行われた、ダニー・マイヤー氏の来日特別講演。今回、終始、ダニー氏が説いていたのは、「マイ・フェバリット」の大切さ。
ダニー氏いわく、「たとえば、ミシュランで星を取ったレストランが、イコール、いつも満席とは限らない。ベストであることとフェバリットであることは、全然別物」。
その証拠に、23年前にダニー氏が作った「Union Square Cafe」は、料理は11位、サービスは12位。と言っても、約22,000店あると言われるN.Y.のレストランの中で、この数字は素晴らしいのですが、ダニー氏はそれよりも、フェバリットで1位を獲得していることに重きを置いています。
「1990年頃から普及したインターネットにより、現在は誰でも情報を共有できる時代。「Union Square Cafe」で出しているローストチキンのレシピも、容易に他のお店でも使うことができる。ホテルのアメニティーも同じ。宿泊した誰かが、「あそこのホテルのシャンプーがすごく良かった」と書くと、すぐ他のホテルでも取り入れられ、同じスタート地点に立ってしまう。それは、エアラインでも言えること。その状況の中で、誰かのフェバリットになるには、いつもそれ以上のことをしなければならない。それが、私が考えるホスピタリティーというもの」。
なので、ダニー氏の中では、「ホスピタリティー」と「サービス」は全然異質のもの。「食事を適切な温度で出せる、預かったコートをちゃんと返せる、空調が過不足なく入っているなどのことは、やっとゲームに参加できる資格を得られるくらいの当たり前のサービス。ホスピタリティーとは到底呼べません」。
スタッフウィッチングがホスピタリティーの第一歩。
満席の東京ミッドタウン・カンファレンスルームにて講演を行うダニー氏。 |
では、レストランでこのホスピタリティーを上げるには、何をすればいいのでしょう。
それは、第一にスタッフのウォッチング。「ホスピタリティーは、ラテン語のオスピティに由来する言葉。ゲスト、ホストという真逆の意味が両方含まれています。ゲストはもとより、スタッフもロボットではないので、心がある。それはちゃんと見ていてほしいという共通の思いがあるということ。上に立つ者は、それをしっかりウォッチングし、その仕事ぶりに「よくやった」という評価を与えることが大切」。
また、ダニー氏はこうも言います。「高いホスピタリティーを持つ人をHQと呼んでいますが、これはIQと同じで生まれながらに持っているもの。どちらも勉強してもあまり変わることはない。でも、IQと違い、HQは形にできる。教え込む余地があるということ」。
「カスタマー イズ ナンナーワン ではあるけれど、ゲストを一番に見ていたのでは、本当のホスピタリティーにはつながらない。第1にスタッフ、第2にゲスト、第3にコミュニティ、第4にサプライヤー(食材の提供者)、第5にインベスター(お金が入ってくること)の順で考えるのが大切。この5つがいつもきれいなサークルを描いていて、初めて本当のホスピタリティーは成り立つ」。
このようにスタッフの面倒をしっかり見ることで、それが最上のホスピタリティーとして、ゲストのもとへ届くと考えるのが、ダニー氏の理論。水の上で優雅に泳ぐ白鳥も、体の49%はいつも水の中。この部分なくしては、ホスピタリティーは語れないということなのですよね。
「どんな美味しいローストチキンより、人がゲストを呼び返す」。
不器用で、口ベタでも、その人のそばにいればなんだか安らぐ。そんな人になりたいと思う、ダニー氏の講演会でした。
「Union Square Tokyo(ユニオン・スクエア・トウキョウ)」
著:ダニー・マイヤー氏 翻訳:島田楓子氏 『おもてなしの天才』
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