政財界の大物も訪れた「石蕗(つわ)」の歴史が息づく元料亭レストラン。

Wanofu club
塀の中はわびさびのある2階建て一軒家。
懐石料理と言うと、どんなイメージを抱きますか? 「高い」「少ない」「堅苦しい」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

まして、それが料亭ならなおのこと。一晩のディナーとは思えない金額を払い、場違いな所に足を踏み入れてしまった後味の悪さと肩こりだけを手土産に、とぼとぼ帰る自分を想像してしまいがちです。

でも最近は、そんな敷居の高さを打ち破る元料亭なるお店が増えてきています。そのひとつが、東銀座の「Wanofu club(ワノフクラブ)」。

お店の前に立つと、朱塗りの塀に囲まれた風情のある一軒家に、時がさかのぼる感覚を覚える方もいることでしょう。そう、ここの前身は、ふぐ料亭「石蕗(つわ)」。現在は懐石ですが、以前は政財界の大物も訪れるという格式の高さが有名でした。目を閉じると、その頃の賑わいが今も聞こえてきそうです。

多忙な日々が風化させる相手の輪郭をもう一度はっきりと刻み直す場所こそが本当の隠れ家。

Wanofu club
靴をぬいでくつろぐ広いダイニング。
もともと料亭は、人と人をつなぐ社交の場。お料理のみならず、それぞれの会話を大切にするプライベートな席配置には長けています。だからこそ、その流れを継ぐ元料亭レストランも、どっしりと腰を落ち着けて過ごすにふさわしい風格をたずさえているのです。

ここなら、一緒に訪れた人の話に耳を傾け、笑顔を見つめ、ともにお料理を味わうことができる。相手の意外な一面を発見し、さらに好きになることもあるでしょう。長く付き合っているカップルやご夫婦にこそ、そんな時間は必要。多忙な日々が風化させる相手の輪郭をもう一度はっきりと刻み直せる場所、それこそが本当の隠れ家と言えるのではないかと思います。

花街の歴史を今に伝える風雅な店内は、石燈篭や箱庭が残るくつろぎの空間。

Wanofu club
隣のテーブルとの間隔が充分に取られたゆとりのある席配置。
そんな隠れ家レストランに移行しつつある料亭は、ここ東銀座では珍しい存在ではありません。なぜなら、この地域は昔の花街。新橋、赤坂と並んで高級料亭が栄えた場所だからです。

でも、そのプロセスは2通り。ひとつは、名前ごと新しい経営者に引き取られ、全く新しく生まれ変わるケース。もうひとつは、経営者はそのままで、伝統を生かしつつリニューアルされるケース。

「Wanofu club」は後者。現在も伝統の発展と継承に寄与しているのです。

その証拠に、石燈篭や箱庭など、料亭時代を思わせる風雅なお店造り。室内も、料亭の頃のままの日本を代表する画家・伊東深水や加藤辰明の絵が、その頃のままの塗り壁に今も色を落としています。そして、最近ではあまり見かけなくなった鴨居

Wanofu club
プライベート感を満喫できる5人席。
時々、「鴨居って何ですか?」と聞く若い女性もいらっしゃるとのこと。でも、それもご愛嬌。「そんな質問も気軽にできる雰囲気作りを心がけています」と言うのは、ゼネラルマネージャーの佐藤さん。

イタリアンやフレンチがもてはやされる昨今。一番近くて遠い料理になった和食を、もう一度手ごろな値段で楽しめるお店にしたい」。

この言葉を聞けば、懐石に不慣れな人も勇気百倍。体当たりで楽しめること間違いなしです。

世界の食材が手に入る東京ならではの懐石は、カジュアルに楽しむ東京スタイル。

Wanofu club
主菜で選べる「鴨ロースの網焼き 山葵ソース」。
ここの懐石の良さは、コースの流れをカジュアルにしていること。量がわずかで皿数だけが多いのは、器をめでる醍醐味はあるものの、10分待っても食べるのは1分というテーブルが寂しい状態になりかねないもの。

それを皿数を減らすことで一品の盛り付けを華やかにし、目の前のお料理をゆっくり堪能できるよう工夫しています。

また、内容も斬新。従来の懐石の枠にとらわれず、マリネやミルフィーユ仕立てなど欧米的手法も吸収。間口を広げた演出に、新鮮さを見出す人も少なくありません。

Wanofu club
サラダで選べる「夏野菜の胡麻ソースがけ フルーツトマトと床節を添えて」。
懐石はもともと茶道が発達した京都の文化。郷土料理と言っても過言ではないのです。だからこそ、ここでは世界の食材が手に入る東京だからこその素材選びに着目。京都とは一線を画した東京スタイルを目指しているのです。

次ページでは、昨日今日できた和食ダイニングにはマネのできない伝統と斬新が融合した元料亭ならではの新懐石料理をご紹介します!