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かみくら (神楽坂)

神楽坂の奥通りで、ひっそり息づく一軒家。そこは、築50年の割烹旅館を改築したフレンチレストランでした。料理の味が描けるチャングムさながら、意外な素材を合わせるシェフのセンスに舌鼓です。

執筆者:河野 優美

築50年の割烹旅館をフレンチレストランにしたかみくら

かみくら
時代を過去にタイムスリップした様な石畳の小道。
路地を曲がると、急に石畳。神楽坂は大通りを一本入るだけで、昭和初期にタイムスリップした様な小道に続くことがあります。

そこは、人が2人並ぶのがやっとの細さ。両側には、戦後何年からここに建っているのだろうと思われる古い家屋の数々。そんな通りの奥に、そのお店はありました。

その名も、「かみくら」。実はここ、以前は築50年の割烹旅館だったのです。その純日本風一軒家に少しだけ手を加え、昨年7月、フレンチレストランとしてオープンしました。

かみくら
アラカルトがいただける1Fのダイニング。コースは2Fの個室で。
お店の前に立った時、どこかに似ているという思いが頭をもたげたのですが、メニューを見て納得。そうだ! 「茶寮」だ! 「茶寮」とは、同じく神楽坂にある和風カフェ。こちらもやはり築40年のアパートを改装してオープンしています。

聞けば、経営が同じaya-dining Group。それで、かみくらのデザートも茶寮のものだったわけです。きっと、古い建物を今に生かす手法が得意なのでしょう。手馴れた感じを受けました。


山葵、生姜、柚子をソースに使うチャングムさながらのフレンチ

かみくら
これ以上の配合はないという程、ワサビが絶妙なソフトシェルクラブのクリーム ワサビのタルタル。
そして、その古きと新しきを生かす手法は、料理にも表れていました。メニューを見ると、一見現代フレンチらしい料理名の中に、昔ながらの和スパイスの名前が。

それは、山葵だったり、生姜だったり、柚子だったり。それらはたいがいソースとして使われ、聞き慣れない料理の多いフレンチを、誰もが容易に想像できる味へと導いてくれていました。

その代表例が、ソフトシェルクラブのクリーム ワサビのタルタル。

かみくら
日本の食材がフランスの家庭料理に近づいたアイナメの唐揚 野菜チップとラタトュイユ添え。
日本食ではあまり馴染みのないソフトシェルクラブを、ワサビを入れたタルタルであえることで、グッと親しみやすい味になっています。ワサビの分量もこれ以上の配合はないというくらい、タルタルの玉葱、パセリ、レモン汁などに馴染んでいました。

また、その逆もあります。アイナメの唐揚 野菜チップとラタトュイユ添え。これは、和スパイスではないですが、お刺身で食べるイメージが強いアイナメを、フレンチの定番と言えるラタトュイユと合わせることで、日本食の素材を限りなくフランスの家庭料理に近付けていました。

かみくら
大ぶりにカットされた豪快なノルウェーサーモンのマリネとウニ アボカドのセルクル。
ズッキーニ、茄子、セロリ、パプリカなどから出た水分が、元々身が柔らかいアイナメによく染み込んで、とてもおいしかったです。

その他にも、ノルウェーサーモンのマリネとウニ アボカドのセルクル、豚の角煮なども、行儀が悪い例えですが、お皿まで舐めたくなる程でした。

今、NHKでやっている韓流ドラマ「チャングムの誓い」で、主人公チャングムが、師匠のサングンから、料理の味を描ける才能があると言われますが、その才能とは、この食材とこの食材を合わせたらきっとこんな味になると脳の中でシュミレーションができるということ。

かみくら
ソースとお肉がまろやかに溶け合う豚の角煮。
それによって、普通の人ならハナから取り合わない食材をミックスさせられるということなのです。

食材の合わせ方を見ていると、ここのシェフにもそれと同じようなセンスがあるように思えました。

次ページで、隠されていた2冊目のメニューについてご紹介します。
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