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松井秀喜、強い気持ちが呼んだ必然のMVP

ヤンキースの松井秀喜がやってくれた。ワールドシリーズという夢舞台で、日本人としては初めてMVP(最優秀選手)に輝いたのだ。少々遠回りをした感はあるが、強い気持ちが呼び込んだ結果でもあった。

瀬戸口 仁

執筆者:瀬戸口 仁

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松井秀喜、苦節7年の末、ワールドシリーズMVPに

松井秀喜
「不要論」も出た松井秀喜だが、結果で見事その声を払拭することになった
ヤンキースの松井秀喜外野手(35)がやってくれた。ワールドシリーズという夢舞台で、日本人としては初めてMVP(最優秀選手)に輝いたのだ。シリーズ6試合で3本塁打を含む13打数8安打(打率.615)、8打点という文句なしの活躍。とくに世界一を決めた第6戦では、先制2ランを含む3安打、1960年のボビー・リチャードソン(ヤンキース)が持つシリーズ記録に並ぶ史上2人目の1試合6打点の大暴れ。松井秀が名門を9年ぶり27度目の世界王者に導いたと言っても過言ではない。

「今はもう最高。それだけです。信じられない。感無量です。この日のために1年間頑張ってきたわけですから。何年もここにいたが、初めてここまで来られて最高。家族に一番感謝している」

「最高」という言葉にこれ以上ない実感がこもる。ヤンキースに入団した2003年、いきなりワールドシリーズ出場を果たしたが、マーリンズに世界一は阻まれた。その後、毎年のように有力候補に挙げられながら、夢舞台には上がれなかった。その間、井口(ホワイトソックス、フィリーズ)、田口(カージナルス、フィリーズ)、松坂と岡島(レッドソックス)に先を越された。悔しさは言葉にできない。それだけに「最高」は文字通り「最高」なのだ。

ジラルディ監督の英断もMVPの一因

ワールドシリーズMVPを「自分でもビックリだし、夢みたい」と松井秀は振り返る。全6試合でフル出場は半分の3試合のみ。あとの3試合は代打での3打席だけ。しかし、その3打席で本塁打とタイムリーを放つ3打数2安打1打点だ。第6戦の6打点と同じくらいにこの代打での3打席が評価されてのMVPだが、これはジラルディ監督のファインプレーともいえるだろう。

右ひざに続いて左ひざも手術して迎えた2009年シーズン、序盤はひざの痛みもあり、思うような働きはできなかったが、気温の上昇とともに打撃は向上し、結局、打率.274、28本塁打、90打点の好成績を残した。このシーズンの中でジラルディ監督は1度も松井秀を守備に就かせなかった。ひざに問題がなくなり、激走しても大丈夫になったにも関わらず、出場はDHか代打で「左翼」は1試合も守らせなかった。

この英断が、松井秀の打席での集中力をさらに高めた。完璧に「打つ」ことのみに集中できたのである。それがワールドシリーズでの代打の3打席にもつながったのである。
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