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松井秀喜ほど周囲に気を遣う人間はいない(2ページ目)

開幕は「8番」からスタートした松井秀喜だが、一時はリーグの首位打者になるほど打ちまくり、「4番」までたぐり寄せた。その好調は「結婚」にあるといえるだろう。詳細をさぐってみた。

瀬戸口 仁

執筆者:瀬戸口 仁

野球・メジャーリーグガイド

松井秀喜ほど周囲に気を遣う人間はいない

結婚が右ヒザのリハビリに功を奏したといえるが、もっと重要なことは結婚による責任感だ。こう書くと「どんな男だって結婚によって責任感は強くなる」と思うだろう。それがとくにスポーツ選手となるとシビアなものになる。結果が如実に出てしまうからだ。

野球選手の場合、結婚して初めて迎えたシーズンの成績が悪いと、その本人よりも奥さんのせいにされかねない。打者なら打率が下がったり、本塁打が減少したりとか、投手なら勝ち星に見放されたりすると、「結婚したからだ」と言われることが多い。心優しく、気遣いの男である松井秀にとって、それだけは言われたくない。

松井秀ほど周囲に気を遣う人間はいない。人は他人に自分の名前を覚えてもらうことほど嬉しいものはないが、松井秀はそれを実践する。どんな取材でもその取材者の名前を覚えようとし、次に会う時まで忘れないように努力する。

こんなエピソードがある。ヤンキースに入団した年、ニューヨークの地元紙の担当記者が次々と取材に訪れた。迎えたキャンプで松井秀は親睦のためにその担当記者たちをイタリアン・レストランに招待した。その際、記者全員の名前を覚えていたという。「(メジャーでは)レストランに選手から招待されることはないし、こんなに早く名前を覚えてくれた選手もいない」と並みいる猛者連中もいたく感激した。

こんな心配りができる松井秀が、今季もし成績が落ち込んで、それを奥さんのせいにされたら「冗談じゃない!」と怒るだろう。自己最高の成績をあげる可能性は、シーズン直前に「結婚した」今年が最も高いと私は思う。



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