67歳にして夢を叶えたジョー・トーリ
『覇者の条件―組織を成功に導く12のグラウンド・ルール』¥1,785(税込) トーリのマネジメント論は、野球だけでなく一般の会社でも応用できる |
そのニューヨーク州ブルックリンで生まれ育ったトーリは、1960年にミルウォーキー・ブレーブス(現アトランタ・ブレーブス)でメジャーデビューを果たして以来、カージナルス、メッツなどで捕手、一塁手、三塁手として活躍。71年には首位打者、打点王、MVPにも輝き、選手生活18年間で通算打率.297、252本塁打、1185打点、2342安打を残した。
監督としては77年、37歳の時にニューヨーク・メッツのプレーイング・マネジャーとして指揮を執り始め、ブレーブス、カージナルス、ヤンキースと渡り歩き、通算2067勝1780敗の勝率.538。メジャーリーグでは、選手として2000本安打、監督として2000勝以上を達成したのはトーリしかいない。
選手を褒めるも叱るも、監督室での1対1
このトーリが名将と呼ばれるようになったのは、ヤンキースの監督に就任してからだ。96年にヤンキースを18年ぶりにワールドシリーズに導き優勝、98年から00年にかけてワールドシリーズ3連覇。実に12年連続でプレーオフ進出を果たした。選手をうまく使っての偉業であるのは間違いないが、この裏にはトーリ独特の選手掌握術が隠されているのだ。最も顕著なのは、徹底した対話主義をとることである。たとえば、選手をみんなの前で決して褒めたりしない。同様に選手を決して怒ったりしない。メジャーリーガーは誰もがプライドの高い個人事業主だ。褒められた人間を見ると「何だあいつは!」となり、人前で怒られてはプライドがとても傷つく。この心的傾向をよくわかっているトーリは、選手を褒めるのも叱るのも相談に乗るのも監督室での1対1だ。