ロンドン五輪で野球が除外された理由
野球の原型であるイギリス発祥のクリケットは、イギリスではもちろんポピュラーなスポーツだが、野球はそうではない。フランスの方がまだ野球が盛んだ。ロンドンが開催地争いでパリに競り勝った背景には、「野球開催の可否」も具材の一つになったのでは、とも勘繰りたくもなる。
しかし、主に野球マイナー国のIOC委員に多い「開催反対派」の立場から見れば、野球を正式種目から除外すべき合理的な理由はいくつもある。アテネ五輪を顧みてわかる通り、仮にロンドン五輪で野球が開催された場合、イギリス側にはスタジアム建設など、多大なコストがかかり、それに見合った採算性(興行収入)も計算できない。「開催することに意義がある」とばかりは言い切れないからだ。
そしてもう一つの除外理由には、IOCのMLBに対する「注意喚起」が考えられる。MLBは事実上、世界の野球状況に強い影響力を発揮している。IOCは世界のスポーツを牛耳りたい。しかしMLBはオリンピックに対して協力的ではない。そこでIOCは五輪種目から野球を外すことによって、「もっとIOCに協力しろ、そして野球を世界に普及させろ」というメッセージを発したと取れなくもない。
かなりの僅差だった「野球除外」投票
2005年7月の「可否投票」の結果は後に明らかになった。ロンドン五輪の野球開催に対しては、賛成50票・反対54票。そして野球と同時に除外されたソフトボールの結果は、賛成52票・反対52票・棄権1票。
実際のところ、投票結果はあまりにも接戦だった。野球をやる国・やらない国でくっきりと二分された印象がある。そして後に「嘆願書」が提出されたのは、「やる国」側にとればこの結果があまりにも僅差だったからだ。特にソフトボールの投票結果は、「過半数=50%超」という解釈問題、すなわち棄権票をどうみなすか、50%は過半数ではないのか、という微妙な話なので、動議が出て当然という状況だった。
そしてこの投票結果の意味するところは何か。オリンピックで野球はどのように復活するのか。そのシナリオをタイムラインで探ろう(続く)。
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