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『ジャブラニ』が残した強烈なメッセージ

南アフリカW杯で使用された『ジャブラニ』は何かと話題を振りまいた。しかし、決勝戦で見せた両チームのGKが見せた好セーブは現代サッカーへのメッセージのような気がするのだ。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

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「用具」の進化も進んだ近年のW杯

ボール
大会注目のひとつになったジャブラニ。GK泣かせだったが真相は―
スキーやゴルフのように用具の進化が成績に結びつきやすい種目とは異なり、サッカーは「個人」と「組織」の進化が未来図を描いてきた。傑出した個人が輝けたのは1980年代までであり、その後しばらくは個人を打ち消すための組織が重視されていく。

そして近年は、再び個人が組織の一歩前へ出てきた印象だ。リオネル・メッシ(アルゼンチン)やクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)といったタレントの登場は象徴的である。

個人と組織に「用具」が加わったのは、4年前のドイツW杯からだろう。『チームガイスト』と呼ばれる公式使用球が、無回転のブレ球を量産させたのだ。

GKがシュートストップの技術をどれほど磨いたところで、ボールの軌道が予測不可能では対応のしようがない。ゴールを守るGKからすれば、『チームガイスト』は悪魔のような存在だった。対照的に、ゴールを決めることを目ざすフィールドプレーヤーたち、とりわけフリーキックのキッカーには、何とも頼もしいボールだっただろう。すでに流行していた「ブレ球を蹴る」という技術を、さらにワンランクアップさせるアイテムだったからだ。

南アフリカW杯で使用された『ジャブラニ』は、GKとフィールドプレーヤーのどちらの味方だったのか。GKの評判は良くなかった。大会開幕前には、ジャンルイジ・ブッフォン(イタリア)やイケル・カシージャス(スペイン)らの世界的なGKが、南アフリカで待ち構えるボールを酷評していた。
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