「用具」の進化も進んだ近年のW杯
大会注目のひとつになったジャブラニ。GK泣かせだったが真相は― |
そして近年は、再び個人が組織の一歩前へ出てきた印象だ。リオネル・メッシ(アルゼンチン)やクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)といったタレントの登場は象徴的である。
個人と組織に「用具」が加わったのは、4年前のドイツW杯からだろう。『チームガイスト』と呼ばれる公式使用球が、無回転のブレ球を量産させたのだ。
GKがシュートストップの技術をどれほど磨いたところで、ボールの軌道が予測不可能では対応のしようがない。ゴールを守るGKからすれば、『チームガイスト』は悪魔のような存在だった。対照的に、ゴールを決めることを目ざすフィールドプレーヤーたち、とりわけフリーキックのキッカーには、何とも頼もしいボールだっただろう。すでに流行していた「ブレ球を蹴る」という技術を、さらにワンランクアップさせるアイテムだったからだ。
南アフリカW杯で使用された『ジャブラニ』は、GKとフィールドプレーヤーのどちらの味方だったのか。GKの評判は良くなかった。大会開幕前には、ジャンルイジ・ブッフォン(イタリア)やイケル・カシージャス(スペイン)らの世界的なGKが、南アフリカで待ち構えるボールを酷評していた。