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ウクライナ 1-0 日本、日本代表東欧遠征(2ページ目)

東欧遠征の第2戦は終了直前の不可解なOKで0-1の敗戦。ジーコ監督はレフェリーに対し怒りが収まらないようです。現地の元川悦子さんからマッチレポート、ジーコ監督、選手のコメントをどうぞ。

執筆者:小野寺 俊明

ジーコ監督の猛抗議もむなしく、ウクライナに0-1で惜敗。
世界の壁を再認識させられた日本代表

選手を落としてきたウクライナ相手だけに、日本が優位に試合を運ぶと見られたこの試合。ところが蓋を開けてみると、ウクライナが無駄のないボール回しを見せる。最終ラインとボランチのキープ力とパス能力が高く、サイドの使い方も見事。これは予想をはるかに超えるレベルだった。日本はボールを奪うポイントが絞りきれず、しばしば後手を踏んだ。それでもワンボランチに入る中田浩二と坪井・茂庭ら最終ラインの連携はまずまず。ゴール前で壁を作って相手の攻めを粘り強く跳ね返した。

前半の日本の最大の決定機は27分、中村のスルーパスを受けた柳沢がフリーになった場面。しかし柳沢は自分で打たずに中央に折り返してしまった。ここに誰かが走りこんでいたらよかったのだが、残念ながら人影はなし。日本は大きなチャンスをフイにした。逆にウクライナは42分、FWリュクンからパスを受けたFWべリクが完全フリーになったがシュートをふかしてしまう。どちらも1点を決められないまま前半は0-0で終了した。

後半に入ると、ウクライナのブロヒン監督はMFナザレンコ、ロタンら本来の中心選手たち次々と送り出してきた。ジーコ監督も高原に代えて鈴木隆行を投入。彼の献身的な守りでチーム全体の守りが多少改善され、巻き返せそうな雰囲気が漂った。しかし信じられないことに後半9分、中田浩二がナザレンコに後ろからタックルに行ったプレーで一発退場。他の選手たちは「どう見てもイエローだ」と彼をかばったが、日本は数的不利の状況を強いられることになった。

ジーコ監督はこの試合が代表デビュー戦となる長身DF箕輪義信(川崎)を投入。3バックにして守りを固めた。坪井がリードする最終ラインは初めてで、最初はずるずると引いてしまいがちだったが、徐々に日本はバランスを取り戻す。前半はほとんど見られなかった駒野の上がりや中田英寿の強引な突破なども見られ始める。指揮官の思い切った采配は的中した。

けれども数的優位のウクライナは攻撃の手を緩めない。左右からのクロスでパワープレーに出たり、2列目や3列目から飛び出してゴールを狙うなど、多彩な攻めを展開するも、どうしても1点が奪えない。遠目からのシュートも精度を欠いた。

引き分けOKの日本にしてみれば、ここで守りきれれば御の字だった。時間が流れ、試合はスコアレスで終わりそうな雲行きだった。が、またも落とし穴が待っていた。後半44分、箕輪がMFボロベイをぺナルティエリア内で押したという反則を取られ、PKを献上。相手MFフシンに1点を奪われてしまったのだ。

ジーコ監督のラトビア人主審に対する抗議は凄まじかったが、判定が覆ることはない。終了のホイッスルが鳴り、ウクライナが1-0で勝利したが、ジーコ監督の抗議は試合後まで続いた。こんなに激高するブラジル人指揮官を見たのは初めてかもしれない。それほど彼はこの負けを納得できなかったようだ。そんな姿を目の当たりにし、日本人メディアも後味の悪さを感じた。

とはいえ、日本は個人の技術・強さ・パワー、チーム全体のパス回しといった部分で2軍のウクライナに負けていた。「ボールを受けてもパスコースが見つからなかった」と中村が言うように、前半から主導権が取れずに苦しんだ。中田英寿が持ち前の強さを発揮し、稲本が攻守両面で貢献し、坪井と茂庭の両センターバックが大いに奮闘するなどチームにとって前向きな材料もあったが、悪条件を克服できない勝負弱さを露呈したのもまた大きな事実といえる。

最終ラインとダイヤモンド型の中盤は一応の成功を収めたが、前線からの守備はうまく機能しなかった。それはプレスに行くポイントが定まっていないためだろう。これだけパス回しのうまい相手だと、プレスのかけ方がハッキリしていなければボールは取れない。が、今の日本はその約束事がハッキリしていない。本番まで8ヶ月という時期に守備システムのメドが立っていないのは痛い。これは今後、力を入れて改善しなければいけないテーマといえる。

いくつかの得点パターンが見えてこなかったのも残念だった。このところ好調だったFW陣も不発。「決定力不足」という長年の課題が再びチームにのしかかった。ジーコ監督は「攻撃はできている」というが、それも確実なレベルではない。パス回しにしてもウクライナから学ぶべき部分は大いにあった。

2006年ワールドカップ本番まで8ヶ月。今回の東欧遠征の2試合で得られた課題と収穫を真摯に受け取め、修正を図ってほしい。サッカーの世界は広く際限がない。ウクライナ代表を見てもその現実が理解できる。今のままで日本が本大会で決勝トーナメント進出できると思ったら大間違いだ。その厳しさをしっかりと再認識しつつ、今後のチーム強化をしていく必要がある。

●ジーコ監督のコメントに続く
●中村・三都主・稲本・川口・松井・箕輪・駒野選手のコメントはこちら
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