日本画/日本画関連情報

生誕110年記念 凝視の眼 徳岡神泉展

徳岡神泉の生誕110年を記念した展覧会が、岡山県の笠岡市立竹喬美術館で開催されます。展示作品の中には永く所在が不明であった作品の他、初公開作品も多く含まれています。

執筆者:松原 洋一

凝視の眼によって捉えられた至純な世界


徳岡神泉「仔鹿」
徳岡神泉「仔鹿」1961年 東京国立近代美術館蔵
徳岡神泉(1896-1972)の生誕110年を記念した展覧会が、岡山県の笠岡市立竹喬美術館で開催されます。同美術館は日本画家・小野竹喬(おの・ちっきょう)の美術館として、近現代日本画の中枢を担った画家について検証を重ねてきており、本展では徳岡神泉が近代日本美術だけではなく、世界の現代美術の流れの中でどのような存在であったかを明らかにする試みでもあります。

出品は約80点の代表作と、10数点のスケッチで構成され、展示作品の中には永く所在が不明であった作品の他、初公開作品も多く含まれています。


福田平八郎とともに近代美術史における最も重要な存在


徳岡神泉「蕪」
徳岡神泉「蕪」1958年 京都国立近代美術館蔵
本展を企画した同美術館副館長の上薗四郎氏は、「徳岡神泉は福田平八郎とともに近代美術史における最も重要な存在」としたうえで、本展の企画趣旨を次のように語ってくれました。

「徳岡神泉は、生涯にわたり心の目で対象を凝視しつづけた画家です。彼の言葉に、つぎのようなものがあります。
――対象と自己との間には、自己意識や俗塵などの雑念妄想が雲のように去来している。それらの俗念をはらいのけたとき、はじめて対象即自己となり、遂には自己もなく対象そのものもない世界に到達しうる。その境地が自分の求める世界だと信じた――
神泉の芸術は、この忘我の唯一絶対境を求める歩みであったと思われます。

今回の展覧会の一つの目的として、この独自な制作姿勢によって創造された代表的な作品を丁寧に検討して、世界の現代美術の流れの中でどのような存在であったかを明らかにしたいと考えています。そのなかで、戦後の代表作に対して単に『幽玄甘美』という言葉を与えるのではなく、『悉有仏性』とでも言い得るような、神泉芸術のもつ宗教性について改めて考えてみたいと思っています。」

徳岡神泉「流れ」1954年 京都市美術館蔵
徳岡神泉「流れ」1954年 京都市美術館蔵


■徳岡神泉(とくおか・しんせん):明治29年(1896)京都市上京区神泉苑町通御池下ル生まれ。明治42年(1909)第一高等小学校在学中に土田麦僊の紹介で竹内栖鳳の画塾「竹杖会」に入り、その後京都市立美術工芸学校で学ぶ。大正8年(1919)には京都を離れ富士山麓に移り住むが、大正12年(1923)京都に戻り、再び竹杖会に入る。大正14年(1925)帝展に初入選、その後は帝展(後の日展)を舞台に活躍。画風は次第に背景を略した象徴的画面構成になっていき、昭和28年(1953)に毎日美術賞を受賞、32年(1957)日本芸術院会員、35年(1960)京都市文化功労者、41年(1966)文化功労者となり、同41年(1966)文化勲章を受章した。47年(1972)京都市で死去。

■展覧会情報
展覧会名:生誕110年記念 凝視の眼 徳岡神泉
会期:2006年6月10日(土)~7月17日(月・祝)
会場:岡山県・笠岡市立竹喬美術館

■関連講演会
テーマ:神泉芸術が今に伝えるもの
講師:原田平作(愛媛県立美術館名誉館長)
日時:2006年6月11日(日)13:00~15:00
場所:笠岡グランドホテル(光の間)
(参加は無料、要申し込み)

■笠岡市立竹喬美術館ホームページ:http://www.city.kasaoka.okayama.jp/0013/0001.html
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