「全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本 2010年本屋大賞」が、4月20日に発表されました。受賞作の『天地明察』をご紹介します。

数学オタクの棋士が日本を変えた!? 冲方丁『天地明察』

天地明察
<DATA>タイトル:『天地明察』出版社:角川書店著者:冲方丁価格:1,890円(税込)
『天地明察』は、ひとりの青年が初めて日本独自の暦を作り上げるまでを描いた小説だ。わたしの周囲で時代物はあまり読まないという人も、この本は好きだという。なぜなのだろう?

時は江戸、四代将軍家綱の御代。主人公の渋川春海が21歳のときに、物語は始まる。春海は、将軍と囲碁を打つ碁方の名門、安井家に生まれた。あだ名は〈そろばんさん〉。本業の囲碁よりも算術に夢中で、何かというと算盤で計算するからだ。

そのことで老中に選ばれ、日本各地の緯度を計測する旅に出た春海は、800年用いられてきた当時の暦に誤差があることを知り、新しい暦を作り上げていく。暦は政治、経済、宗教、民衆の日常生活、すべての基準になるものだ。今風に言うなら数学オタクの棋士が、日本を変える。驚かずにはいられない。

まず、春海が天才ではないところがいい。囲碁はそこそこの実力だが、同時代の碁方には、後に史上最強の棋士ともいわれる本因坊道策がいる。算術は本当に好きだけれども、どんな問題でもすぐに正解を出してしまう関孝和には全然かなわない。努力の人なのだが、血反吐をはきながらという感じではない。ただただ問題を解くことがうれしいから頑張る。軽やかなのだ。

しかも、春海は改暦を賭けた大勝負に何度も負ける。