第1位 宮部みゆき
ある日突然、婚約者の前から姿を消した若い女性。その行方を追ううちに、カード社会の闇が浮かび上がる。 |
・庶民を主人公にしていること
・先が気になって思わず一気読みしてしまう引きの強さ
・この人の作品ならハズレがないという安心感
以上の3点が圧倒的な支持の背景にあるのではないか。宮部作品ではたいてい、真面目に生きている人が酷い目に遭う。その人の運命が気になって、読むのがやめられない。それから、どこにでもいそうな普通の人がぞっとするような悪意を見せたりする。だが、いや~な現実を描きながらも、根底にはまっとうな倫理観がある。作品のレベルが常に安定しているところも重要だ。誰しも買い物して「ああ、損した」とは思いたくないものだから。
おすすめの1冊は『火車』。カード社会の闇を背景に、幸せになりたかっただけなのに奈落の底へ落ちていく人々を哀切に描く。主人公の刑事と息子の強い絆、一緒に謎を追う修理工の青年など“世の中も捨てたもんじゃないよね”と思わされるような脇役の存在が、暗い物語の中で救いになっている。最初に失踪したまま、なかなか姿を見せないヒロインの造形が秀逸!
■最初に読むならこの1冊
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タイトル:『火車』
出版社:新潮社
著者:宮部みゆき
価格:900円(税込)
⇒大極宮(宮部みゆき・大沢在昌・京極夏彦の公式サイト)