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第137回芥川賞・直木賞決定!(2ページ目)

第137回の芥川賞・直木賞が決定! 話題の受賞作と、芥川・直木賞がもっと面白くなる本をご紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド

直木賞松井今朝子『吉原手引草』

吉原手引草
吉原一と名高い花魁葛城が身請けの直前に姿を消した! いったい、どうやって? そしてなぜ――。16人の証言から、事件の真相が浮かび上がる。
どれも甲乙つけがたい読みごたえのある作品が並んだ直木賞候補作。受賞作は松井今朝子の『吉原手引草』だった。吉原で起こった花魁(おいらん)消失事件について、証人をインタビューしていく、という形式で描かれたミステリ色の強い時代小説だ。

■読みどころ
・吉原の風俗描写
廓で働く人々の役割分担、客が花魁に会うまでのシステム、かかるお金など、江戸随一の歓楽街・吉原の様子が詳細に、しかもわかりやすく紹介されている。花魁の肢体のエロティックさ、衣装の美しさも楽しめる。

・多彩な語り口
遣手(やりて)、床廻(とこまわ)し、幇間(たいこもち)など、会う人の職業ごとに話し方がまったく違うのがおもしろい。花魁といえば思い出す「ありんす」言葉は、彼女たちは地方出身が多かったので、なまりをなくすために作られたのだとか。

・魅力的な謎とあっと驚く結末
葛城が消えた方法は単純なのだが、動機がすごい。客のフリしていろんな人に事件のことを聞いてまわっている「色男」の正体も気になる!

人の心は深き井戸。身を乗り出して覗いても、暗(くろ)うて底は見えぬものざます。

という葛城のセリフが、この物語を象徴している気がする。葛城の“深き井戸”、ぜひ覗いてみてください。

<DATA>
タイトル:『吉原手引草(よしわらてびきぐさ)』
出版社:幻冬舎
著者:松井今朝子
価格:1,680円(税込)

次ページでは芥川賞・直木賞がもっと面白くなる本をご紹介します。

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