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『ひとがた流し』

本格ミステリのリーダー的書き手として、推理小説というジャンルを超えて「創作」に取り組む表現者として、精力的に活躍する著書の最新作。四十代の女性を襲った病。その時、友は・・・。

執筆者:梅村 千恵


『ひとがた流し』
それぞれの生活を送りながら「つながり」を大切にしてきた四十代の女性三人。一人の女性を襲う病。その時、友は・・・

『ひとがた流し』
・北村 薫(著)
・価格:1680円(税込)


■「日本語による創作」に積極的にコミットする著者の最新作。四十代女性を襲った病。その時、友は・・・
 著者は、『夜の蝉』で日本推理協会賞を受賞したのをきっかけに素性を公開し、推理小説作家として活躍。現在は、ジャンルを超えて作品を発表するとともに、大学で教鞭をとるなど、「日本語での創作」全般に積極的にコミットしている。そんな彼(覆面作家当時は、いろいろと噂がありましたが が、男性作家です)の最新長編作。

 アナウンサーの千波、作家の牧子、元・編集者で写真家の妻の美々。四十代の女性三人は、高校時代からの友人。千波は母を看取り現在は独り暮らし、牧子と美々はともに子連れで離婚。牧子は、大学受験を控えた娘・さきと二人で日々を送る。かたや美々は写真家・類と再婚。娘の玲は、類を実の父と信じ、写真家を志している。
 三原色のようにそれぞれの生活を送りながらつながりをキープしている一人&二つの家族。家庭的には孤独な千波だが、牧子と美々の娘であるさき、玲にとって「トム(千波の愛称)おばさん」は、母でもなく姉でもないけれど大切な存在だ。
 そんな彼女が、ニュースのメインキャスターに抜擢される。念願のポジションだったが、その直後の検診で、意外な結果が。千波は、深刻な病に罹患していたのだった・・・。

 「中年期を迎えた女性の闘病記とそれを見守る友たちの友情物語」――設定だけを見るなら、本作をそう規定してしまうこともできよう。だが、これで本作を理解した気になるのは、あまりに大きな過ちだ。
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