となり町と戦争開戦!?リアリティーなき「戦時下」を生きる主人公は・・・小説すばる新人賞受賞作『となり町戦争』・三崎亜紀(著) ・価格:1470円(税込)この本を買いたい!■どこにであるような地方の町で、となり町との戦争開戦!? リアリティーなき戦争に対峙する問題作 斉藤美奈子、高橋源一郎、豊崎由美ら、選者が大絶賛、2005年度最大の収穫との呼び声も高い、第17回小説すばる新人賞受賞作。 となり町との戦争のお知らせ 開戦日9月1日 終戦日3月31日(予定)開催地 町内各所――町役場からの広報で、突然“開戦”を知った僕。 町は、いつもどおり。戦争の気配はどこにもない。次第に「戦時中」であることを忘れて日常を過ごす僕に、突然、町役場から呼び出しを受け、「戦時特別偵察業務従事者」に任命される。偵察業務として、となり町を通過する際に見たできごとを記録する僕だが、戦争につながる出来事はどこにも見当たらない。 だが、町の発行する広報誌には、戦死者の数が記され、町役場の女性、香西さんは、「あなたは確実に、今、戦争に手を貸し、戦争に参加している」と言う。 そのうち、僕は、「戦時拠点偵察業務従事者」に任命替えされ、「となり町戦争推進室分室」と名づけられた、となり町のアパートの一室で香西さんと夫婦として暮らすことを命じられる。香西さんと過ごす時間が増えるにつれ、僕は、この戦争に関するリアリティーのなさや疑問を彼女にぶつけるが、彼女は、戦争という事業を予算内で効率的に運営することが行政の仕事と言い切る。日常の家事分担も、肉体的関係も、「業務」として遂行する香西さん。戸惑いを抱きながらも、彼女との日々を送る僕だが、ある日、「敵」が動いているとの知らせを受け、敵地から脱出することに・・・。少なからずの数のデビュー作が、「私」物語の域を出ない中で、この批判精神の鋭さには、まさに瞠目させられる。 読み進みめながら、私個人と、私個人が属する時代と社会について、深く深く考えさせられずにはいられなかった。12次のページへ