『なんくるない』
沖縄をモティーフにした心に沁みる4編を収録


『なんくるない』
・よしもとばなな(著)
・価格:1365円(税込)

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■沖縄をモティーフにした4編を収録。静かな引力で読む者をひきつける作品揃い!

 2004年、『デッドエンドの思い出』、『海のふた』、『High&Dryはつ恋』と、彼女らしい物語を精力的に発表し、ファンを一安心させた吉本ばななの最新小説集。
 タイトルからも伺えるように、モティーフは、「沖縄」である。

 表題作の主人公は、「私」は、33歳。イラストレーターである。「一番すきなことが言葉にできないようなこと」である彼女は、「口に出して言える目標」を立てるのが好きな夫と、一年前に離婚。姉の家にころがりこんで、慰謝料らしきものもいくばくか貰ってリハビリ中。「まるで最初から結婚をしていなかったような」落ち着きを取り戻しつつあった。だが、ある日、書店でのあるトラブルをきっかけに、自分のマイペースな生き方が、前夫はじめいわゆる「世間」から否定されているかのように感じ、落ち込んでしまうのだった。その落ち込みから立ち直なおるための処方箋として、「私」は、沖縄への旅を決意する。
 そして、その地で、偶然、かつて女優として主演した唯一の映画を観て、自分に憧れ続けてきたという男・トラに出会う。沖縄の地を愛し、母と姉がやっているイタリア料理店を愛し、母と姉へ屈託のない愛情を抱き、30歳過ぎても、彼女たちと暮らす日々を愛するトラ。「私」が、映画で演じたホステス「ピンキーちゃん」が少年の頃からの理想の女で、ピンキーちゃんと出会えたことが嬉しくて、無邪気に「私」を追いかけるトラ。世間で言う「大人の男」には程遠い、マザコン、シスコン、天然のダメ男。そんなトラとの出会いに私は、戸惑いつつ・・・

 表題作ほか、3編を収録。ありきたりの言い方しかできなくて情けないのだが、どれも、じんわりと、心の柔らかいところに染み入ってくる話だった。
 かけがえのない人、かけがえのない時間、かけがえのない風景――そういったものが、文字面ではなく、実感として、染み入ってくる話だった。そんな静かな引力を持っている話だった。
この引力は、どこから来るのだろうか?