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ルール無用!町田版大江戸騒動記 『パンク侍、斬られて候』(2ページ目)

『へらへらぼっちゃん』『夫婦茶碗』など、炸裂する言葉のリズムで独自の境地を拓いてきた著者の新作は、なんと時代小説!口八丁手八丁、フリーランスのパンク侍VS奇怪な宗教団体。こんな時代小説アリ!?

執筆者:梅村 千恵

■肥大した自意識が形成する「脳化」社会を痛烈に批判。メッセージ性の高さで既作と一線を画す

 「あなたがたがこの世で苦しみを抱えているのは、この世の成り立ちがそもそも間違っているからだ」という「腹ふり党」のアジテーションに乗り、踊り狂う人々を主人公は、こう批判する。
「やつらはそれを合理的だから信じるんじゃないんだよ。奴らは、自分が信じたいことを信じているんだよ」――

 この記述のみならず、著者にしては過剰だと思えるくらいの説明性で、現代人のあり方に対する痛烈な批判が展開されるのである。

「彼らはまず自意識、自意識が傷つくことをなによりもおそれ、名より実より自意識を尊重する」
「彼は自分が相手にとって彼だということが分からない。つまり自分にとって自分は僕だから相手も自分を僕だと思っているのだ」・・・・・・

 きわめつきは、こちら。ラスト近く、人語をしゃべる大猿(トンデもないなぁ~)まで登場する阿鼻叫喚の大混乱のさなかに、その騒動の扇動者である人物は、こう自分に問う。
「世界には俺しかいない。俺だけがみている世界は俺の頭の中にある世界だ。俺の頭を断ち割れば世界は変貌する?」――

 養老孟司氏の大ベストセラー『バカの壁』をお読みになった方を含め、ピンとくる方も多いだろう。そう、この作品でパロディーにされるのは、身体性を喪い、自分の意識のうちに世界があり、その世界が意識によってコントロールできると「脳化」した社会なのだ。

 著者は、そのことを批評している「脳」に対しても、容赦ない。ラストのラストには、「脳化社会の外にいる」はずだった主人公も、強烈なしっぺ返しを受けるのである。

 語彙の使い方、リズム、展開には、この著者らしいパンクな魅力がいっぱいだが、既存作に比較すると、メッセージ性が強い作品である。作風の変化というのではなく、おそらく、ひとつのチャレンジだろう。何せ、ひとところにとどまるような才能ではないのだから。

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ミュージシャンでもある著者。オフィシャルページ「Official MachidaKou Web Site」では、小説のほか、ビデオ、ライブの紹介も
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