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モノの描かれ方から小説を読む 『文学的商品学』

『失楽園』、『なんクリ』、両村上作品、江国、川上作品・・・小説は、洋服、食べ物、車などモノ=消費財をどう描いてきたかを考察。トンでも描写にも理由アリ。読書の楽しみ方が広がります。

執筆者:梅村 千恵


『文学的商品学』
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文学作品に登場するモノたち。「何」が描かれているかではなく「どう」描かれているかに着目
『妊娠小説』『紅一点論』など、斬新な切り口で、読書の新たな楽しみを教えてくれる著者。今回は、彼女が着目したのは、洋服、食べ物、車など、作中に登場する「モノ」たちだ。もちろん、小説の中に登場するモノを取り上げた書物は、既に数多く存在する。特に、食べ物=料理に関しては、純文学、時代小説からミステリーまで、「あの主人公が食しているものを食べてみよう、作ってみよう」的な本は、1ジャンルを形成していると言ってもいいほどだ。だが、この本の独自性は、「何」が描かれているのかではなく、「どう」描かれているかに着目した点であろう。

本作で、著者が書くように、モノの描写は、ストーリー展開や登場人物の造詣や、テーマの時代性や、そういった事柄に比較すると、明らかに細部である。読み飛ばしても、なんら支障は、ない。男性の多くは、本作での登場する『恋愛太平記』(金井美恵子)のファッション描写は、確実に飛ばすだろうし、私も含め女性の中には、ハードボイルド小説の車やバイクや銃の微に入り細に入ったメカ描写を「これ、どこまで続くわけ?」と辟易した経験のある人も少なくないだろう。

しかし、逆説的に見てみると、作家たちは、なぜ読み飛ばされることをある程度知りつつ、そのようなモノをそのような形で描写するのか。そこには、無意識であれ、意識的であれ、何らかの意思があるのである。

「小説は、時代を映す鏡」などというが、高度消費社会に生きている我々にとって、「時代」が消費財=モノと無縁であるはずはない。
これらのモノたちを作家たちがどう描いているのか。それを知ることが、作家たちの時代を見つめる視線のありどころを探ることとイコールなのである。

とまあ、文芸評論家の著者にならい、私にしたらちょっとだけ難しめのことを書いてしまったが、本作、単純に面白い。
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