『ローマ人の物語 12 迷走する帝国』
この本を買いたい!
■西からペルシア、東からゲルマン人。「外憂」に対峙するローマの「内患」とは?
今年も、この本の季節になった。年に一度、12月刊行、塩野七生のライフワーク『ローマ人の物語』第12作である。
ローマ建国より始まった同シリーズも、ハンニバル率いるカルタゴとの死闘、共和制の確立と混乱、そして、大英傑ユリウス・カエサルの登場による帝国の誕生、パクス・ロマーナ(=ローマによる平和)の確立、賢帝たちの治世を経て、前作『終わりのはじまり』から、いよいよローマ衰退期へと入った。
著者は、最後の賢帝とも言えるセヴェルス帝の息子カラカラが帝位の治世より筆を起こす。
時は、紀元3世紀。この世紀の後半から、ローマ帝国は、東からはササン朝ペルシア、西からはゲルマン人の大攻勢により、幾度もの国難に遭遇し、国力を消耗させていくこととなる。
ローマ衰退の要因について書かれた文献などはおそらく数多くに存在するのだろうと思う。私は、まったく不勉強なので、明確な比較はできないのだが、推察するに、著者のユニークな点は、いわゆる「外憂」のみならず、「内患」すなわち、帝国の内なる崩壊に目を向けていることにあるのではないかと思う。
著者の指摘する内なる崩壊を一言で要約するなら、「ローマがローマであることを放棄したこと」ということになる。国の形国の形を定めてきた特性のいくつかを放棄したこと、とでも言えばいいだろうか。
もう少し具体的に言うと・・・