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<第1回>平積み本、大解剖! 『声に出して読みたい日本語』(2ページ目)

書店によく似たタイトルでずらりと並ぶ日本語本。ブームの先駆けとなった本書は、続編も発売され、ロングセラーの気配。ところで、今、なぜ日本語?

執筆者:梅村 千恵

■言葉の「リズム」「音」を身体に呼び戻す

さて、当該書籍。古典、漢詩、文学作品から、大道芸の口上、浪曲、落語、早口言葉まで、声を出して読む=暗誦することを目的として編まれた名文集である。

「旅ゆけば、駿河の国に茶の香り・・・」(『森の石松・金比羅代参』より)
「廻れば大門の見返り柳いと長けれど・・・」(樋口一葉『たけくらべ』より)などなど。

この本を手にとった読者のうち何人が実際に声に出して読んだのかどうかは不明だが、挙げられた例文をじっくりと味わうと、完璧に意味がわからなくても、あるものは躍動を感じさせ、あるものはしみじみと哀感を伝え、あるものは美しい情景を脳裏に現出させる。
それは、ここに挙げられた日本語が、固有で、強靭で、洗練された「音」と「リズム」を持っているからに他ならない。
そして、この「音」「リズム」は、本来、日本語を使い慣わしてきた者たちの身体に染み込んでいるものなのだ。

きわめて個人的な見解であるが、海外育ちの某人気歌手の日本語の文章を奇妙なところで分断した歌詞を初めて聞いた時の違和感(裏返して言うと、新鮮な感じ)は、私の身体に内在する「日本語の音」「日本語のリズム」に抵触した結果であろう。
著者の言うように、「文字」に比べ、「音」や「リズム」がないがしろにされてきたことは事実(彼女の歌が支持されているのもその現れ、などというつもりはないが、「書道」の授業はあっても、「暗誦道」の授業はないものね)。
連綿と伝えられ、鍛えられてきた「音」と「リズム」を身体に内在させておく、あるいは、身体に呼び戻すことも「語学」の立派なメソッドの一つであることは確かである。

★あえて、アラ、捜します!
全編に振られた総ルビに、「大声で読めよ!」という押し付けがましさを感じてしまう。「見た目」の美しさは悲しいほど損なわれているし。「声に出してよまなくてもいい日本語」というのもないものか。

この本を買いたい!

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