珍味「ちりとてちん」完成!
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そうとは知らずに旦那が誕生日の祝いに何かごちそうするというので、竹がやってくる。竹にも酒や食事を振舞うが、美味そうに食べるどころか渋々飲んだり食ったりする。さらに、出された酒や食事にケチをつけだす始末。
そこで旦那が「実は先日、長崎の知人から『ちりとてちん』という珍しい食べ物をもらったが、私は無知なのでどうやって食べてよいのか? さっぱりわからない」と竹に訪ねる。
すると竹は「まぁ、長崎に行った事のない旦那にはわからないでしょうが、私は長崎に行った時には毎日、食べてましたよ」といつもの知ったかぶりを発揮しだす。
それじゃぁってことで、その「ちとてちん」の食べ方を竹に見せてもらうことに。先ほどの腐った豆腐と様々な調味料を混ぜ合わせたものが入った瓶を竹に渡す。竹が蓋を開けると部屋中に目がしみる様な異様な臭いが立ち込める。
「ちりとてちん」はどんな味?
「そうそう、これが...ゴッホ、ゴホゴホ、ごふっ、あーこの目のしみる様な、腐ったような...いや、美味そう臭いがちりとてちんです。あーこれはウゲっ、なかなかの上物ですね」と涙を流し、むせ返りながらも知ったかぶりは治まらない。こんな上物はもったいないのでと、なかなか食べようとしない竹に旦那は、そんなことは言わずに食べ方を教えてくれとせがむ。それでも食べずに後ずさりする竹を見て、「本当は知らないんだろう? ちゃんと本当のことを言え」と旦那は知ったかぶりの竹を諭すが、竹は知ったかぶりを譲らない。
ここまでくるとお互いに引くに引けない。竹は「これを食べるのは作法がある」と講釈しながら、「ちりとてちん」食べることに意を決す。この作法があると言い訳しながら、鼻をつまんだり、何度も嗚咽を吐きながら、どうにか食べようとする仕草がこの噺の最骨頂で笑わせどころ
そして、ひと口パクリと食べると、とんでもない味! もう七転八倒で竹はもがき苦しむ。この苦しむ描写は、聞いている客が本当に気持ち悪くなってはダメ。あくまでも滑稽に面白おかしく演じなければなりません。
どうにか、こうにか「ちりとてちん」を飲み込んだ竹に旦那が間髪入れずに「どんな味や?」と聞くと、竹が一言「豆腐の腐ったような味がします」。これがサゲ(落ち)です。
内容は大人による子供のような悪戯話なのですが、食べるシーンが多く、さらに「ちりとてちん」がどんなものかをイメージさせなければなりません。つまり、そこには実際にないモノをあるように客に見せる仕草が必要でかなりの技量が必要とされるので噺家の技量がかなり問われる演目です。
【関連リンク】
・NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」公式ホームページ
・貫地谷しほり オフィシャルブログしほりのおしゃべり工房
・桂吉弥ホームページ